逃水の宴

□右斜め前に、あなたの背
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「……あ、」

そうしてると、ふいと背を向けて、瑠璃くんは先に歩きだしてしまった。
慌てて、わたしは後を追いかける。

「待って、瑠璃くん…っ」

その背に、手を伸ばす。けっして触れることのない手を、伸ばす。
けれど、それはあたたかい何かに包まれた。

「……え…?」

あったかい。ぎゅってした、感覚。
視線を持っていくと、そこには繋がれた手と手。
わたしの手と、瑠璃くんの手。

「………瑠璃、くん」
「…また、転ばれると面倒だからなっ」

瑠璃くんは、こっちを見ないでそう言った。
それが本気かどうかはわからない。
でも、それでも良いと私は思うの。思ってしまうの。
過度の期待は、あとで裏切られたときに苦しいだけ。そう分かっていても。

「……うん…」

今だけは。今だけは、しあわせに浸っても、いいよね…?


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