逃水の宴
□右斜め前に、あなたの背
3ページ/4ページ
「……あ、」
そうしてると、ふいと背を向けて、瑠璃くんは先に歩きだしてしまった。
慌てて、わたしは後を追いかける。
「待って、瑠璃くん…っ」
その背に、手を伸ばす。けっして触れることのない手を、伸ばす。
けれど、それはあたたかい何かに包まれた。
「……え…?」
あったかい。ぎゅってした、感覚。
視線を持っていくと、そこには繋がれた手と手。
わたしの手と、瑠璃くんの手。
「………瑠璃、くん」
「…また、転ばれると面倒だからなっ」
瑠璃くんは、こっちを見ないでそう言った。
それが本気かどうかはわからない。
でも、それでも良いと私は思うの。思ってしまうの。
過度の期待は、あとで裏切られたときに苦しいだけ。そう分かっていても。
「……うん…」
今だけは。今だけは、しあわせに浸っても、いいよね…?
.