逃水の宴
□右斜め前に、あなたの背
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「………あ、っ!」
はしって、はしって。足元なんて見てなかった。
目はきつく閉じてたから。出るはずのない涙がこぼれないように、ぎゅっと瞑ってたから。
だから、転んだ。小石にけつまずいて、手も付けずに転んだ。
「真珠!」
そんなに距離は走ってなかったみたい。
瑠璃くんは、すぐに追いついてきた。
「大丈夫か?核は、傷ついてないか?」
「………」
すぐにわたしを起こしてくれて、核を見て、ドレスに付いたの土を掃ってくれた。
わたしは、うつむいて何にも言えない。
「……真珠」
「っ!」
そんなにやさしい声で、呼ばないで。
くるしいよ。核じゃないの。胸が。
胸が、きゅってなって、苦しいの。
「………」
はずかしさとかいろんなもので、顔が真っ赤になる。
夕陽のせいだと思って。