鏡映し
□雨の日 -the rainy day-
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「ねぇ、エスカデ」
「黙ってろ」
「…ねぇ」
「今クライマックスなんだよ」
「そんなの良いからさ。なんなら俺が簡単にラスト教えてあげるから」
「推理物のラストを教える奴が居るか。嫌がらせか」
「うん」
押し問答に折れたのは此方。
その気配に気付いてか、奴は肘を付いて身を乗り出して来る。
「じゃあマチルダと俺が同時にピンチになったらどっち助ける?」
取り留めの無い話題。
ただの好奇心で、その場繋ぎの。
「マチルダ」
即答だった。
ホラね、と肩をすくめて溜め息を吐かれた。
「…言っとくが」
別に適当に答えた訳では無く。
「お前は大丈夫って分かってるからだからな」
きょとん、と此方を見つめるその澄んだ瞳とぶつかった。
「お前ならどんなピンチでも大丈夫だろ」
得意気ににやりと唇の端を上げて。
座っているから大して差もないのに、見下ろしてやる。
それなのに、呟かれた言葉は、一言。
「…クサッ」
「……それは無いだろ」
(本気で凹んだぞ)
これでも繊細なんだからな、と思っても無いことを言っておいた。
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