鏡映し

□雨の日 -the rainy day-
3ページ/4ページ

 
「ねぇ、エスカデ」
「黙ってろ」
「…ねぇ」
「今クライマックスなんだよ」
「そんなの良いからさ。なんなら俺が簡単にラスト教えてあげるから」
「推理物のラストを教える奴が居るか。嫌がらせか」
「うん」

押し問答に折れたのは此方。
その気配に気付いてか、奴は肘を付いて身を乗り出して来る。

「じゃあマチルダと俺が同時にピンチになったらどっち助ける?」

取り留めの無い話題。
ただの好奇心で、その場繋ぎの。

「マチルダ」

即答だった。
ホラね、と肩をすくめて溜め息を吐かれた。

「…言っとくが」

別に適当に答えた訳では無く。

「お前は大丈夫って分かってるからだからな」

きょとん、と此方を見つめるその澄んだ瞳とぶつかった。

「お前ならどんなピンチでも大丈夫だろ」

得意気ににやりと唇の端を上げて。
座っているから大して差もないのに、見下ろしてやる。
それなのに、呟かれた言葉は、一言。

「…クサッ」
「……それは無いだろ」



(本気で凹んだぞ)

これでも繊細なんだからな、と思っても無いことを言っておいた。


.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ