鏡映し
□雨の日 -the rainy day-
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憂鬱な雨の日はてるてる坊主を下げて部屋の中で読書会。
けれどもう何十回も読んだ本。書斎の棚にはまだ腐るほどあるけど、読めないか興味が持てないかのどちらかで、結局読むものは殆んど無い。
退屈、と板張りの床を転がる。
愛しい人がこんなにも近くに居るのに。
ちゃっかりと、寝台から引きずり落とされたシーツを敷いて痛くないようにして。
仰向けのままじっと此方を見つめる、柔らかな色の双鉾。
何を確かめて居るのか、ぱちぱちと瞬(またた)きをして。
「…なったら悪いのか」
ぱたん、と栞も挟まず本を閉じて、問い返す。
「んー、そうじゃなくってさぁ」
トレードマークの赤い頭巾は放置されている。
ちゃんと片付けろ、なんて母親の様に言っても、相手は生返事をするだけ。
「だってまぁ一般的には格好良い部類に入るのかもしれないけどさ、スパッツだし、マチルダ命だし、スパッツだし、正義馬鹿だし」
「オイちょっと待て今スパッツって二回言ったよな」
「考え方とか古いしなんか面倒臭いし」
「面倒臭い言うな」
「ホント、何処が良いんだろ」
ツッコミはことごとく無視され、挙げ句深い深い溜め息まで吐かれた。
「そしたらエスカデ、長所とかある?」
「良い所は………まぁ、良い所は…」
「ホラ」
「って自分でンなこと言えるかよ」
投げ付けたクッションを顔面で受けた奴はくぐもった悲鳴を上げて沈黙した。
ようやく静かになったと、此方は再び本を開く。