鏡映し
□止まるところを知らない、春の痛み
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「瑠璃…俺が怖い?」
「……なんで?」
不意の言葉に、俺は唖然としたまま問い返した。
センカは、じっとこちらに視線を向けている。けれどその瞳が映すのは俺の知らないもの。
「だって俺、瑠璃の知らないところでいっぱいいっぱい殺してるんだよ?」
言うべき言葉が見つからなくて、俺は唇を噛む。
「ドラゴン殺し……」
呟かれた言葉に、俺はハッとして顔を上げた。
詳しくは知らないが、一匹のドラゴンが力を欲して他のドラゴンを殺し、マナストーンを集めた…それは遠い昔のことではなく。
「知らなかった…俺は正しいことをしてるんだと思ってた」
そしてそのドラゴン殺しには一人の人間が関与していた。
其れが誰かなんて事は知らないけれど。
「けれど後になって凄く怖くなって。
それでもあの時の俺には其れしか選択肢が無かったんだ。仕方なかった…そんな、言い訳ばっかして」
「なにを……」
なにを、言っている?
まるで弁解しているような。
センカは壊れてしまった絡繰り人形のように、淡々とその口から言葉を零してゆく。
「何も知らなかった。馬鹿だったんだ。
でも、それから、ちょっとは考えるようになったんだよ」