鏡映し
□止まるところを知らない、春の痛み
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「なぁ、センカ」
顔をめいっぱい上げて、思った通りの表情(かお)があることに安堵する。
「お前、ホントに馬鹿だな」
「なっ…」
「過去(むかし)の事言って、どうする?
俺には何も出来ない。どうすることも出来ない。過去なんて変えられない。お前の記憶を書き換えるなんて出来ない」
だから、そんな馬鹿なことを考えるのは止めろ。
起こってしまった事実は、どうしようもないんだから。
いつまでもそんなに悩むな。お前らしくなんて全然無い。
「お前の過去なんてどうでも良い。今、此処にいるお前は、「お前」だろう?」
腕を握る手に力を込める。
皺になったら怒られるかもしれないな。
「るり……」
「情けない声出すなよ」
あの日、ぼくらの為に泣いてくれた君はほんものだった。
君は本心から涙を流してくれた。心の底から、ぼくらを想ってくれた。
じゅうぶんすぎるほどに。
そしてその雫でぼくらは助かった。君のおかげだよ。
ありがとうと、どれだけ言っても言い足りないから。