影歩き
□朝虹に映える
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「バドの馬鹿」
暖炉の前で分厚い魔導書を広げるバドに、あたしは精一杯の悪態を吐いてやった。
「なんだよ、いきなり」
「アンタが勝手に弟子入りなんかするからでしょ!」
あんなおっかない人に。
言ったら、バドはちょっと考えるように頭を掻いた。
「んーでも、強かったし」
「強いだけならドラゴンとかでも良いじゃない」
「そうじゃなくてさ」
「人生の先輩だっていうなら、もっと大人の人はたくさん居るわ」
腰に手を当てて、あたしは力説する。
「なんだコロナ、ししょーの事、嫌いなのか?」
「嫌いってわけじゃ」
ないけど。
嫌いじゃなくて、苦手っていうか…。
言葉を飲み込んでしまった理由は分からない。
もしかしたら、一片でもそう思ってたからかもしれない。
「だって、なんか」
はっきり言えないのがもどかしい。でも、はっきり言えるほど確かなものでもない。
握りしめたほうきを、弄ぶ。
「…そうじゃなくて」
語気が弱くなっていくのが自分でも分かった。