夢巡り

□プレゼント フォー ユー
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旅人住人商人、様々なひとの発する雑音が耳障り。
人混みは苦手だって言ったのに。それでも左手の中に確かにある感触に、安心させられてそれ以上何も言えない。
彼が立ち止まったのは、小さな露店前。

「なに?」

ちゃちな手作りのアクセサリ。その割に値段はそこそこ。

「これ、綺麗なあお」

子供のような満面の笑みで風璃が示したのは、やわらかな水色をした石の髪飾り。

「ターコイズって言うんだよ」

店主が人当たりの良い笑顔で風璃に言う。
へぇー、そうなんだー!なんて、感心して。

「君達、旅人なら丁度良い」
「え?」
「ターコイズは旅の御守りなんだよ」

少しの竣馴の後、風璃はそれを差し出して、

「おにーさん、これ幾ら?」
「風、」

私が止める間もなく、風璃はさっさと支払いを済ませて。

「付けてあげるよ」
「…そんなの、要らないのに」

見上げると、彼は嬉しそうに笑みをたたえたまま。

「僕があげたいって思ったから。…うん、似合うよ」

いつもは下ろしてある髪を、まとめ上げて。
首筋の辺りが涼しくなって。

「似合ってるよ」

そんな、嬉しそうに言われたら何も言い返せない。
熱くなった顔を見られない様に下げて、左手の繋がりだけを頼りに雑踏をゆく。
唇を噛み締めて。

 
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