夢巡り
□Murder.
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生臭い。足元に広がる赤い血溜まり。
風璃は、そんな中に茫然と立っていた。
「僕が、やったんだよね」
「たかが雑魚に情など向けるな」
斧に付いた血を振り払いながら、ラルクは事も無げに言う。
「僕が、殺したんだよね」
風璃は繰り返す。うつむき、抑揚の無い声で。
血溜り。肉片。羽毛。
臓物。その他、組織片。
それはかつて"生きていたもの"。
「風璃」
彼は純真な子供であった。そうは分かっていたが、それをどうこう言っている場合ではない。
「僕が居なければ、生きて居られたのに」
「風璃」
「たった数年の命を、それでも僕が断ち切って」
「風璃!」
ようやく此方を向いた風璃は、泣き笑いのような顔で。
「分かってる。分かってるよ。自然の摂理だって。
生き残るのは強いもの。敗者には死を。
それでもね、」
己が手掛けたものに情を向けるのは、いけないこと?
屍を踏み越えてゆくなんて、何も考えずに出来る?
ラルクは、何も言えなかった。
(お前は、此方側に来るべきでは無かった)