夢巡り

□Murder.
1ページ/3ページ

  

生臭い。足元に広がる赤い血溜まり。

風璃は、そんな中に茫然と立っていた。


「僕が、やったんだよね」
「たかが雑魚に情など向けるな」


斧に付いた血を振り払いながら、ラルクは事も無げに言う。


「僕が、殺したんだよね」


風璃は繰り返す。うつむき、抑揚の無い声で。

血溜り。肉片。羽毛。
臓物。その他、組織片。
それはかつて"生きていたもの"。


「風璃」


彼は純真な子供であった。そうは分かっていたが、それをどうこう言っている場合ではない。


「僕が居なければ、生きて居られたのに」
「風璃」
「たった数年の命を、それでも僕が断ち切って」
「風璃!」


ようやく此方を向いた風璃は、泣き笑いのような顔で。


「分かってる。分かってるよ。自然の摂理だって。
 生き残るのは強いもの。敗者には死を。
 それでもね、」



己が手掛けたものに情を向けるのは、いけないこと?
屍を踏み越えてゆくなんて、何も考えずに出来る?

ラルクは、何も言えなかった。


(お前は、此方側に来るべきでは無かった)



 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ