逃水の宴
□子守唄
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「面倒見とかじゃなくて、癖みたいなもんかな」
「今の?」
「うん」
質の悪い癖だ、と風璃は口を曲げた。
念のため、釘を刺しておかないと。
「それ、詩音にはやらないでよ?」
返って来たのが沈黙だったので。
「……センカ?」
「あー、うん。分った。がんばる、よ」
普段の風璃からすれば数段低い声に、流石のセンカも背中を滑り落ちる冷たいものを感じ、どもりながら返事をした。
「でもさ」
「うん?」
「俺、君等と瑠璃の扱い、ちゃんと差つけてるよ」
瑠璃だったら、指で拭うより先に俺の口が行く。
と、さらりと続けられたその言葉に。
「……それ、自覚あるよね?」
「多分」
それが本当に多分な「多分」だったので、風璃はますます不安になるしかない。
なんだか無意識に惚気られている気もして、頭が痛くなってくる。