逃水の宴
□それは夕陽の橙色
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「ディドルほら!海だぜ!」
きらきらと光る水面が、雨上がりの世界のようだとディドルは思った。
「き れ い だ ね ー」
「海の水ってしょっぱいんだぜ」
そうカペラが言ったので、ディドルは海水を掬い上げてぺろりと舐めた。
「う わ っ !」
舌がピリピリする感覚に、ディドルは思わず顔をしかめた。
あはははは、とカペラが笑うので、水を掬ってかけてやった。
「わっ、何すんだよディドルー!」
「カ ペ ラ が わ ら う ん だ も ん !」
むくれたディドルに、カペラは更に声を上げて笑う。
「だって、だってお前、驚いても怒ってものんびりなんだもん…ってうわ、ディドル止めろよっ」
からからと笑うカペラに、ディドルは水をかけ続けた。
すると向こうも同じようにしょっぱい水をかけてきた。
「カ ペ ラ 、 つ め た い !」
「俺の方が冷たいっての!」
いつまでも笑うカペラに、ディドルもつられる様に笑みを溢した。
「あっ、ディドル今笑ったな!」
でも素直に答えるのも癪なので。
「わ ら っ て な ん か 、 な い も ん !」
笑いながら、そう言った。
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