逃水の宴
□07クリスマス企画
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小さな小箱が二つ。
ふと、センカは視線を下ろした。其処には変わらず、安らかな寝息を立てて眠る愛しい人。
「瑠璃、瑠璃」
気持良さげに眠る彼を起こすのは忍びなかったが、それでもセンカはその肩を揺すって優しく目覚めを促す。
「ん…」
お世辞にも良いとは言えない寝起きの瑠璃は、暫く寝惚けているのか固まったままで、風邪をひかないようにセンカは苦笑してその素肌にシーツをかけてやった。
「これ、瑠璃が?」
「…へ?」
指し示した箱を、瑠璃は暫くじっと見つめて、若しやまた眠りに付いてしまったのでは無いかと思うほどのタイムラグの後、口を開いた。
「…ああ、真珠が」
「……真珠姫が?」
恋敵、とでも言うべきだろうかその名を聞いてセンカは表情をこわばらせた。
「真珠に、頼まれて」
「いつの間に?」
「昨日お前が寝た後」
俺も中身は知らないんだが、と続けた瑠璃に、センカは少し訝しげに、けれど彼女ならば危険なもの等入れないだろうと判断し、その箱を開いた。
「!」
「………センカ?」