逃水の宴

□07クリスマス企画
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「開けてみろ」
「…大丈夫なのか」
「ああ」

笑いを堪えるのに必死で、肩が震えていたかもしれないが、一欠はそれには気付かなかった。
じっと袋を見つめ、軅て決心したのかそれを引っくりかえした。

「…もう少し丁寧に扱えよ」

ラルクの言葉と同時に振った、白いもの。それは一欠の持つ袋から零れ落ちた。
白いマフラーと、手袋。

「………」

一欠がどんな表情をしているのかが見えないのが、ラルクは残念だった。

「クリスマス、だ」

そう言って、簡単に教えてやる。
それを理解したのかどうかは分からないが、一欠はゆっくりとそれらを拾う。

「手編みみたいだな」

こんなことをする人物は、一欠にだって分かった。
一欠の家に居候する、双子の森人。

「………あたたかいな」

ぽつり、一欠の口から、優しくやわらかく、それは零された。
ラルクは心底、今の一欠の顔が見れないのが惜しく思った。
一体どんな間抜けな顔をしているのだろうと。

今再び、一欠は口を開いた。
空を見上げて、目を緩く瞑って、マフラーと手袋をその胸に抱いて。



『メリークリスマス』

そう書かれたメッセージカードと、今紡がれた言葉と、そして空からの雪が、落ちた。




一欠ED.
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