逃水の宴

□07クリスマス企画
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「…何だ」
「分からん」

鼻先に突きつけられた青い包みを、ラルクは怪訝そうに見つめた。
差し出している一欠は、心なしかそれから逃げようとしているかの様だ。

「…怪しいものなのか?」

その問いには曖昧な肯定を。
今にも放り投げてきそうなその様子に、ラルクは珍しいと思った。彼が此処まで感情を表しているのは。

「何所にあったんだ」
「部屋」
「お前の?」

再び肯き。
そこまで問答をして、若しかしてとラルクは思い立ったことがあった。

「これ、朝見つけたのか?」
「何故分かる」
「いや、枕元にあったのだろう?」
「お前が置いたのか」
「違うって」

ラルクまでもを疑い始めた彼が、何だかラルクは可笑しかった。

(そういえば、"誕生日"も知らなかったな)

今だけ、ラルクはこの目の前の男が可愛く思えた。
勿論口には出さないが、そして行動にも出さないが、まるで幼子の様だと。
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