逃水の宴
□07クリスマス企画
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窓際に置かれた小さな鉢。雫の様な白い花を付けている。
「あれ、どうしたんだ?」
其れを見つけたらしいエスカデが、風璃に訊いた。
「今日はクリスマスだよ?」
「知ってる」
「ああ、だから君は持ってきてくれたんだもんね」
「違う!」
風璃がご満悦なのは、目の前のホールケーキの御陰。其れを持ってきたエスカデは嫌そうな顔をしながらも、仕方がないのだと自分に言い聞かせる。
「今日の明け方、マチルダに持っていったら…不審者扱いされて…」
涙ながらのその言葉に、風璃は分かってはいないのだろうがじゃあ僕が貰うよ、とそれを受け取った。勿論彼はエスカデの心理なんて理解しちゃいない。只単に甘味が好きなだけだ。
「で、あれだ」
「あれって、あの花のこと?」
最早ケーキしか目に入っていない風璃に、それでもエスカデは諦めずに会話を続ける。
いつも虐げられている御陰で、忍耐力やなんかが身についたようだ。