逃水の宴
□07クリスマス企画
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『ふうり!サンタさんがきたの!』
『よかったね!』
『うん!あのね、サンタさんね、くまのぬいぐるみくれたの!』
『詩音、くまのぬいぐるみ好きだもんね』
『うん。あのね、なんかやさしいの』
『やさしいの?』
『ぎゅってしてるとね、あったかいの。ふうりみたい』
『ぼくみたいなの?』
『ふうりね、あったかいの。はるみたいなの』
『春みたいなの?』
『しおんね、ふゆはさむくてしずかでくらくて、こわくてきらいなの。でもね、ふうりがはるみたいだから、だいじょうぶなの』
『………』
ありがとうと、唇だけで紡がれた。
『あのね、ふうりね』
『うん?』
『ありがと!』
『どうして?』
『ふうりは、しおんのサンタさんだから!』
その言葉に、バレてたのかと風璃は苦笑した。
思い出は雪を溶かすあたたかなもの。
嬉しくて、…可笑しくて、詩音は目を細めた。
はらり、滑り落ちた一枚のメッセージカード。
詩音はそれを拾いながら、小さく笑った。
「今日はクリスマス・イヴなのに」
『Marry Χ'mas!』
彼の癖字をなぞって、詩音はそっと目を閉じた。
詩音ED.