鏡映し
□天空の破片、月のしずく
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夜中に目が覚めた。
否、薄く開いたカーテンがうっすら白い明かりを灯していたから、明け方。
ふと隣の寝台を見ると、安らかな寝息を立てる、己の騎士。
蒲団から抜け出してみる。衣擦れの音がしたが、起きなかった。
野宿ならば微かな音でもすぐに飛び起きただろうが、安全と分かっている町の宿では、何もかもに気を許してしまっている。
若し自分が、彼を殺そうとしてもそれは容易だろう。
真珠姫はくすりと笑った。
そんなことは絶対にしないけれど。
「るり、くん」
そっと、その名を呼ぶ。
無防備なその寝顔が、常よりも幼くて。
いとしくて。
「あなたはいつもわたしを探しにきてくれる」
"迷子"って、嘘なのよ?
素直なあなたは気付かないでしょう。
「だって、わたしが居ないと駄目だものね」
逃げ出してみようかと考える。
ねぇ、あなたは何れだけわたしのことを、あいしてくれてる?
それを知りたくて知るのが怖くて、わたしは態とあなたに見付かるように隠れてるのよ。
「るりくん」
真珠姫は、そっと彼の冷たい頬に触れた。
「だいすきよ」
そして、その薄い唇をなぞる様に触れてから、優しい口付けを。
真珠姫は、至極満足そうに笑んだ。