影繋ぎ

□野宿
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【野宿】


パチパチと爆ぜる焚き火を、身を縮こませながらじっと見つめる。
その緑の瞳に、赤い色が写る。不思議な色だと、一欠は思った。


寝た方が良いとは、一欠は言わなかった。
他人に干渉したがらない彼らしいと、真珠姫は苦笑する。
眠らないで良い訳ではない。歩き通しの体は休息を、何よりも睡眠を欲しているし、明日には目指す目的地に辿り着く訳だから更に体力の回復は必要だろう。
だが、真珠姫は横にもならなかった。
立てた膝を抱え、じっと炎を見詰めている。


その内に一欠はさっさと横になってしまった。眠ったかどうかは分からない。彼は眠るときでさえも鼾も掻かないし、体をぴくりとも動かさない。まるで死んでしまったかのように。
それでも変事の際には真っ先に飛び起きる。まるで常に命でも狙われているかのようだ、と真珠姫はいつも感心するよりも呆れる。


そしてそれは横で夢の世界に沈む、彼女の騎士も同じようで。
若し彼が起きていたら、火の番に真珠姫を立たせた事を一欠に怒っただろうが、彼は今日までの旅路と、自分と同時に真珠姫を守らなければいけないという体力精根尽き果て、今は地に溶けるように眠っている。

  
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