影歩き

□悦びの歌
2ページ/6ページ








目が覚めるとそこは彩りの世界。
沢山の"仲間"の煌めきで、輝いていた。
そしてそれは佇んでいた。
歓喜と驚愕のざわめきの中、ひっそりと立っていた。

「氷華が」

傍らに立っていた瑠璃が、呆然と呟いた。誰に伝えるでもなく。

「石に、なったんだ」

きゅう、と声がしたので視線を向けてみれば、そこには彼の常の相棒の子竜が、石の彼にすがっていた。

「涙を、流して」

きゅう。喉の奥の悲鳴が、天を引き裂くように。
気が付けばざわめきは収まっていた。

「瑠璃」

レディパールは思わず呼び掛けた。

「お前、……涙が」

虹色の綺麗な雫が。
彼の瑠璃色の瞳から溢れていたから。
レディパールは彼に歩み寄った。そっと頬に触れ、流れる液体に手を伸ばす。軈て伝い落ちて石の粒となったそれは、紛れもなく。

「涙石…」
「…パールも」

そこで此方に意識を向けた彼は、驚きに目を見開いて言った。

「え…?」
「パールも、泣いて、る」

ひくりと、彼は喉を震わせた。溢れ出そうな叫び声を押さえて。
再び生まれたざわめき。注目は此方。

「何故…」


何故、涙が。
何故、彼は涙を?


「なんでっ…!」


石になることを知っていながら。





ぽつり、雫が。



  
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ