影歩き

□心からの
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「たんじょうび、だと」
「誰が」
「バドとコロナ」


出てきたのは、彼の家に居候する双子の森人の名。
そう言えば彼等は双子で、ということは誕生日は一緒。
で、その誕生日が近いらしい。


「祝ってやれば良いだろう」
「………」


こんな話を何も墓石の裏でしなくても、と口を挟む者はいない。
足の下は奈落だが、地上の空気はどこまでも澄み切っている。


「…一欠?」
「祝う…?」


まさか、とラルクは思った。


「…お前、若しかして、誕生日を祝って貰った事が無い、のか…?」
「………」


無言は肯定。
弱った、とラルクは鼻を掻いた。


「そもそも、そんなものを持っていない」


更に加えられた言葉に、ますます困惑する。
ここは慰めれば良いのか、構わなければ良いのか。
発言した当人は、さして気にしては居ないのだが、彼がそれに気付く由は無かった。
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