鏡映し
□常盤
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とくり、とくり。温もりと鼓動と。
「…どした?」
くいと引っ張った服に反応する彼の人。返される柔らかい笑みはいつもと変わらない。
けれど、この腕の中の体温も、いつかは離れていってしまう。きっと半永久的な寿命を持つ己にとっては遠くない未来。
こぼれ落ちて、ゆく。
「…いつまで、こうしていられるんだろう」
夢であります様に。永遠に目覚めない夢であります様に。
堕ちて、堕ちて。
ゆっくりと目を閉じる。暗闇の世界。真っ暗闇の。
「永久(とわ)、なんて有り得ないんだよ」
彼らしかぬ物言いに、びくりと身を竦ませた。
宥める様に背中を撫でるその手は、やっぱりあたたかな。
「だからこの瞬間が、大切なんだ」
其れは、春の日差し。