鏡映し
□手を、繋いで。糸を、繋いで。
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「真珠、寒くないか」
「平気よ、瑠璃くん」
心配そうに振り向いてくれるようになったのは、ここ最近。……そう、瑠璃くんがあの人に逢ってから。
その気遣わせな視線も、やさしく差し伸べてくれる手も、わたしに合わせてくれるような緩い歩調も…そして、少しの微笑みも。
けれどそれは全部、あの人のもの。そう思うと、なんだか悔しい。
さくりさくりと、雪道を行く足音。そして、吐く白い息。
瑠璃くんが貸してくれたマントを肩から掛けてるから、わたしはあんまり寒くないけど、瑠璃くんは素肌をそのままで、少し…ううん、かなり寒そう。血の気が失せて、白くなってる。
それが痛々しくって、わたしは思わず、そっとその手を取った。
「!」
感覚はない様にも見えるけど、瑠璃くんは一瞬ぴくりとした。
「これでちょっとはあったかい、でしょ?」
石の腕ではない、つかんだ方の腕を、私は両手で抱き締めるようにして、そのままわたしの羽織るマントの中へ入れた。
「真珠…」
今だけは…そのやわらかい笑みを、わたしに向けて。
今だけでいいから、わたしのものになって。
「…ありがとう」
思わずこっちがつられちゃいそうに、とろけた微笑みを。
甘く、甘く。
「瑠璃くん、寒くない?」
「…あぁ」
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