影歩き

□零れ落ちた光の雫
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手にした一振りの短剣。するりと抜けて、固い地面に音を立てて刺さった。
なんて無力なのだろうと、それは分かっては居たけれど改めて思い知らされる。

「村雨」

呼ぶと、傍らの小さなドラゴンは少し首を擡(もた)げた。それから甘える様にその身体を、彼の足に擦り付ける。

「………」

彼の目の前に横たわる群青の守護神(ブルー・ドラゴン)。最早それは生きては居ない。彼が、断ったのだ。其の長い生を。
其の巨体から流れ出る血は止め処なく。彼の足下も又生臭い池が出来ていた。

「お前は、俺が憎いか」

己が連れにそう問う。まるで此の小さなドラゴンが、地に這う大きな青いドラゴンと少しでも繋がりがあった様に見えた。
ふるる、と小さな竜は身体を震わす。其れは否定を表すのか、はたまた恐怖を感じてか。
けれど彼は満足げに息を吐く。

「憎みたければ憎めば良い。そうして生きてゆけ」

あまりにも勝手な、自己満足な言葉。

「俺はそんな事では傷付いたりしない」


   
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