夢巡り

□間に合わない。
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涼しげな音を立てて、残りは氷ばかりになってしまったグラスを、ストローで意味もなくかき混ぜる。

自分以外は客が居ない。昼間の酒場なんてこんなものだ。無法地帯でもない限りは。


ウエイトレスが邪魔くさそうに、その水色の髪を掻き上げながらこちらへやってくる。片手に水差し(ピッチャー)を持って。



「…………」

そのまま何も言わずに私の前の席に腰を下ろす。
別段私も気にならなかったし、咎めるようなことも無かったので、放っておく。そして私は同じようにストローを動かす手を止めない。
彼女が少し顔を顰めたけれど何も言わなかった。


そうして春の麗らかな午後は少し過ぎるのだ。


底に少し残っていた、けれどもう溶けた氷の所為で薄くなってしまったオレンジジュース。



「……不味い」

一口啜って。けれど殆ど水の味しかしなくて。

ウエイトレスは何も言わなかった。




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