影歩き
□Platonic
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「髪、伸びましたね」
いつものようにペット牧場でぼんやりとしていると、洗濯物を抱えたコロナが通りかかって、そう言った。
ああ、と思い出したように一欠は髪を一房摘む。
いつの間にかその金色の髪は、前髪は目に掛っているし後ろは首の辺りが擽ったい。
切るか、と不意に取り出した鈍い銀の煌めきに慌てたのはコロナだ。
「ちょっ、氷夏さん!短剣で切るつもりですか!?」
「………」
なんとも不思議な視線を返され、コロナは息を吐く。
「危ないじゃないですか」
「…別に」
「それに、そんなんじゃちゃんと切れないですよ」
待ってて下さい、と言い置いて、コロナは家の中へ走っていく。直ぐに戻ってきたその手には、鋏が。
「これもそんなに綺麗じゃないですけど…」
短剣よりはマシですよね、言いながらコロナは一欠の後ろ髪に手を伸ばした。
しゃきん。
軽い音。
「………」
興味深そうに寄って来たペットを手だけであやしながら、一欠はされるがままになっていた。