dreams…
□一仕事終えたら取り敢えず君の元へ
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オートロックの扉からかちゃり、と小さく音がした。控えめにゆっくりと開かれる扉から見えた影は足早に部屋へと踏み入って直ぐに密室へと戻す。
「おかえり」
「…淋しかったですか?レディ」
歩み寄ってきた白い姿はさもそれが自然であるかのように私の肩を抱き、ちゅ、と軽いキスを額に寄越した。
ホテルの一室、少し窮屈だけれど小洒落ていて高級感が漂っている。
彼は脱いだシルクハットを私に被せると、端のダブルベットに腰掛けてゆっくりとネクタイを解いた。何気なしにシルクハットを被りこんでみると、先ほど頂戴したキスの際に緩く鼻を擽ったキッドの髪の甘い香りがする。どうにも変に興奮してしまってちらりと彼に目線を遣った。
しゅるり、と首からネクタイが外されてそのままぽいとベッドに投げ出される。白いスーツも上着から脱いでカッターシャツのボタンに手を掛けていた。
「――何を見ているんです?」
キッドのその言葉にやっと私は彼の一挙一動を凝視してしまっていたことに気が付く。
「まさかずっと見ているつもりじゃあないですよね?」
「…っ!」
過剰に反応してしまって真っ赤になる私をくすくすと笑いながらもボタンを外している手は止まないもので、彼の素肌が露になる前にぐるりと振り返って壁際に顔を寄せた。
――勿体ない。世間が夢中になっている怪盗キッドの折角の姿を御覧にならないとは、
「どんなマジックよりも貴重ですよ?」
背中で聞いたその声は明らかに私をからかっている。
暫く壁と向かい合っていたものの足音がすぐ後ろに近寄った途端、唐突にぎゅっと抱きしめられてびくりと強張ってしまった。
伝わってくる温度は妙に熱くて。
「…何か着なよ、上」
「必要ないでしょう」
キッドに持ち上げられた私の身体はそのままベッドに沈められる。
ゆっくり目を伏せながらモノクルが外された。
「さぁ、夜が始まりますよ」
優しく頬を撫でられて、落ちてくる唇に目を閉じた。