dreams…
□レンズ越しより鮮やかに
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白い影はゆらりとほんの少しよろめいて私の元へ歩み寄る。
「――…返して、下さい…私のモノクル――」
モノクルを握った私の手を撫であげて、伏せがちだった眼は私を真っ正面に捉えた。
その上、彼の吐息はそのまま私が吸い込んでいるんじゃないかと思うほど至近距離に向かい合っている。
「そのモノクルには度が入っているんです。どうも見えませんもので…あなたがどういった表情をして私を見ているのかも分からない」
キッドの両手、その掌は私の頬を覆って優しく肌を滑る。
そのまま下へ。首筋を通って肩、そして鎖骨の辺りを指でなぞった。彼は本当、肌に触れるのが巧い。
「貴女の唇は、何処にあるんでしょう?」
その指が置かれていた鎖骨の括れにゆっくりと怪盗の唇が下りた。
ずきり、と鈍く痛んだ場所は色濃く痕を残しているだろうけど、確かめる間もなくその宛がわれた唇は首筋を滑って輪郭をぺろりと舐め上げた。
緩く感じ始めた興奮に強張って、耳まで真っ赤になっていそうな顔を彼に見せてしまえばきっと調子に乗らせてしまう。
ぐっとモノクルを握る手に力を入れた瞬間、彼の指になぞられた唇へと口付けられる。
「本当はモノクルなんて要らない。よく見えていました、貴女の可愛らしく喘ぐ顔」
抑え切れないくらいに。