忍たま乱太郎
□例えれば、君は
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学園長の使いで、オレと久々知は街へ繰り出していた。用事も済み、土産の団子も買って、さて帰ろうかという時に、ひとりの女の人が目に留まる。
「見ろ、へーすけ!きれいな人がいるぞ!」
「んぁ?」
すっとした背筋に薄桃色の着物、整った顔に控えめな紅。凛とした空気を纏った人。オレたちの身近にはまずいないタイプだった。
「はぁー、きれいだなぁ…。ああいう人を、『立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花』っていうんだろうな」
思わぬところで眼福にあやかったと女の人を見送っていると、久々知の乾いた声が横から飛んできた。
「ハチはああいう人がタイプなの?」
直球かよ…
「いや、別にそういうわけじゃねぇけど…?」
「……ふぅん、そうなんだ」
「な、なんだよ…」
無表情のまま目を細めて、久々知は遠ざかった女の人の後ろ姿を見送る。
「ハチにきれいって思われて、いいなと思ってさ」
「はあ…?」
なんだ、それ。
「…なぁ、俺が女装したら、同じこと言ってくれる?」
「言って、ほしいのか?へーすけ」
久々知の眉がかすかに寄った。想像したらしい。バカだなぁ。
「…いや…やっぱりいいや…気持ち悪いし…」
「しッ、失礼な…!!」
オレが叫ぶと少し笑って、帰ろうか、と久々知が言う。こんなふうにいきなり突拍子もないことを言ってくるあたり、苦手だなぁ、コイツ、と思う。
百合の花だなんて、もったいない。同じ白なら、
コイツはやっぱり豆腐で充分だ!
end