Calme

□布袋葵
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「好きだからに決まってるでしょ」
「で、ですよね〜」



あー、そんなハッキリと照れる事なく言い放つあなたを、私尊敬しますよ。

でも、何で!?



「あ、あのさー、准くん」
「うん?」
「私達ってさ」
「うん」
「友達、だよね?」
「そうだけど」



そうなのよ。友達なのよ。
ずっと友達だったの。
別に凄い気が合うとか、同じ趣味持ってるとか、そんなんじゃなかったんだけど。
何か気がつけば一緒に遊んでる友達。

強いて言うなら、気を遣う事のない気楽な友達。
それは、お互い変な意識がないからこそ成り立つ関係で。
男性として意識した事なかったし、女性として見て欲しいなんて意識も勿論した事なかった。
はずなのに……。



「友達を好きになるのはダメ?」
「いや、ダメじゃないけどさー……」
「好きになっちゃったものはしょうがなくない?」
「そうー……だけどぉ……」



イヤイヤイヤ。
そんな淡々と言われても実感湧きませんしね。

戸惑いばかりが先に立つ今の状況、どうすればよいのでしょう。



「准くん!」
「うん?」
「准くんはカッコいいと思うよ」
「ん? あー、ありがとう」
「うん。んで、私はさ、准くんの歴代の彼女さん達知ってるじゃん」
「うん」
「正直、彼女さん達に焼きもち妬いた事とかないよ」
「うん。彩も彼氏いたもんね」
「うん」



……………。
だからさ、この淡々とした空気ってどうなの?
今までと全く変わらないよ?
変わってないよ?
私、告白された気分にこれっぽっちもなれないんですけど?



「私 タイプ違うじゃん」
「俺、好きになった人がタイプだよ」
「へー、知らなかった」
「彩もでしょ?」
「うん、そう。私も……って、違ーう!!」
「ん?」



ダメよ! 准くんのペースに流されちゃ!
違うのよ、そう、違うの!



「何が違うの?」
「いや、だってさ! 私達惚れた腫れたの関係から程遠かったじゃん!?」
「今まではね。」
「いや、だからさ、今更? みたいな?」
「何で? 人を好きになるのに今更なんてある?」



……確かに!
でも、何だろ? 何なんだろ?
「好き」って言われたはずなのに、ドキドキしてない自分がいるの。
真面目な顔して冗談言ってんじゃないかって、疑ってる自分がいるの。



「そんなに嫌?」
「え?」
「俺と付き合うの」
「えー?……だって……」
「だって?」
「考えた事ない」
「じゃあ、考えてよ」



ずっと同じテンションの准くんに、終始呆気にとられながら、その日はそんな感じで終わった。





*******

「ハァー……考えるって言ってもなぁ……」



また独り言を呟いて。
完全に友達だと思ってた人から告白されるのは初めての経験で。
しかも、淡々と、ドキドキする事なく。

この先、私達ってどうなっちゃうんだろう……。


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