Calme

□サンビタリア
4ページ/5ページ


「私の事構うの面倒くさくなったの? 嫌だった? こんな風に毎回呼び出したり……」

そりゃ、嫌だったよ。
でも、それはきっと彩が思ってる事と意味が違う。

「今までいつも私の話聞いてくれてたけど、昌くん特に何も言わなかったじゃん」

それは、言いたくても言えなかったんだよ。

「昌くんいつも、とことん付き合ってくれてたじゃん」

彩と一緒に居たかったからだよ。

「プレゼントだって貰った事ないし」

あげれなかったんだよ。

「何で今更こんな……」



彩が花を見てどう受け取ったのかわからないけど、もう泣いてしまいそうで。
それがどういう意味なのか、俺にはわからないけど。

悲しくさせたのなら、ごめん。
彩はきっと、こんなの求めてなかったんだろ?
俺が、俺の気持ち伝えようとしたのが間違ってたんだろ?



「彩、ごめん」
「……何で謝るの?」
「あのな」
「……………」
「その花束の中に、俺の気持ちが詰まってんだ」
「え……?」
「もう、いい加減」
「え……」
「“俺を見て”くれよ」



とうとう言った、俺の気持ち。



「俺が幸せにしてやるから」
「……………」
「俺にしとけよって……意味」



玉砕して尚告白してる俺って、どんだけ惨めなの?

もう、開き直りで彩を見たら………

泣いていた。



「……ウソだよ」
「え?」
「昌くんが……そんな……」
「彩?」



え? その涙はどっちなの?
ここまで、グチャグチャになった感情では、乙女心を理解してやる事なんて俺には出来ないぞ。



「私に……昌くんは勿体無い」

え?

「勿体無いんだよ」

え……それって……。

「だから私……なのに……」
「彩?」
「……サヨナラかと思った」
「え?」
「花束渡されて、今日が最後だよって意味かと思った」

そんな風に……。

「だから私……」



もうずっとポロポロと涙を溢してる彩を見て、もしかしたら俺以上に彩は混乱したのかもしれない、と思う。

あぁ、俺達こんな関係長くし過ぎて、肝心な時すれ違っちまうものなんだな。



「彩」
「……………」
「とりあえずさ」
「……………」
「“俺を見つめて”」



ゆっくりと彩が俺を見つめる。
涙をいっぱい溜めた瞳で。



「昌くん」
「ん?」
「本当はね……お花、嬉しい」



あぁ、やっと受け取ってくれた。
受け入れてくれた。
俺は、それが嬉しい。



「俺達さ」
「うん?」
「付き合い長いけど、お互いの本音言い合った事なかったな」
「……うん」
「これからさ」
「うん?」
「いっぱい話そ」
「うん」
「それから……」



彩が花束を抱いて微笑む。
まだ少し涙目だけど、彩の雰囲気にとても似合う花束だって今更気づく。



「彩を連れて行きたい所があるんだ」
「どこ?」
「それは、行ってからのお楽しみ」





ー おわり


→アトガキ


次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ