Calme

□サンビタリア
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無理矢理水を渡すと、彩はいぶかしがりながらも飲んでくれた。
二時間もフライングして飲んでたアルコールが、グラス一杯の水でクールダウンするとは思わないけど。
少しでもちゃんと理解して欲しいから。



「昌くん?」
「彩にさ、渡したい物があるんだ」
「え? 何なにー? 何くれんのー?」



彩のテンションに、もうすでに挫けそうになる。

わかってる、酔ってんのはわかってるけど、お前軽いなー……(笑)。
まぁ、俺の気持ちなんて気づいてないんだから、しょうがねーんだけど。



「これ、受け取って」
「……え……?」



Calmeのマスターに作って貰った花束バスケットを彩の目の前に差し出した。
すると、さっきまでの酔って騒いでいた彩が一瞬固まった。



「え? 何……これ?」
「花だけど」
「え、あ……あ、うん、だね! 花だねぇ」



今まで見た事ない程真面目な顔つきになったと思えば、すぐにいつもの彩に戻ってしまった。



「ヤッダー、昌くん。何これ? もしかして失恋記念にってヤツ?」
「え? いや……」
「もーバカバカ。洒落にならーん! アハハッ」



え? あれ? アハハッて……。

勝手に彩なりの解釈されて、俺の話を聞こうとしない彩。
俺が口を開こうとすると、それより先に彩がふざけて捲し立てる。

ちょっと待て。
これは、どうすればいいんだ?



「彩」
「どうせ私はフラれんぼだーい!」
「ねー、彩」
「いらない。」
「え?」
「花なんて要らない」



ええっ!?

ふざけてたと思ったら、今度は急に冷たく言い放った。
こんな彩の反応今まで見た事なくて、知らなくて、戸惑ってしまう。



「彩? あのさ」
「私、花欲しいなんて言ったっけ?」
「言ってないよ。だけど」
「じゃあ、要らない。下げて」
「彩?」
「欲しくない。下げてよ!」



彩の荒い口調を初めて聞いた。
さっきまであんなに笑ってたのに、こんなに怒り出すなんて。

俺からの花は受け取れないのかよ。



「彩の為に買ってきたんだ」
「要らないって言ってるでしょ」
「うん。なら、彩が捨ててよ」
「え?」
「買ってきて、受け取ってもらえず、俺が捨てるの? せめて、受け取らなくても捨てる物なら、彩が捨ててよ」
「あ……」



結局、俺の気持ちは届かずしまいか。
ヤベー、俺泣きそう。

ショックがデカ過ぎて、その場から動く事も出来なければ、彩の顔を見る事も出来ずにいた。



「……何で?」
「え?」
「何で急にこんな事するの?」



黙っていた彩が口を開いたと思ったら、怒りは消えたのか今度は悲しそうな表情になっていた。



「こんな事、今まで無かったじゃん」
「うん、だからね」
「もう、面倒くさくなった?」
「え?」


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