Calme
□サンビタリア
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語ってる間、俺ダメだなって思ったり、今だからこそ俺しかいないとか、グルグルグルグル未だに気持ちが定まっていないのに気づく。
俺に足りないのは何だ?
自信? 男気?
何が必要なんだ?
「はい、坂本さん」
自問自答を頭の中で繰り返してた俺の目の前に、マスターが静かに置いた物。
「どうかしら?」
「か、可愛いです」
「それは良かったです」
「可愛いんですけど……可愛過ぎませんか?」
黄色の花が主になってる色鮮やかな花畑をそのままバスケットに詰め込んだ様な、それは可愛い花束(っていうの?これ)になっていた。
持ち手部分には沢山のリボンが巻かれている。
「お、俺が渡すんですよ」
「ええ。ピッタリかと思って」
「え?」
「この黄色のお花サンビタリアっていうお花なんだけど、花言葉はね」
「はい……」
「“私を見つめて”。ね、ピッタリでしょ」
あまりの恥ずかしさに赤面してる自分がわかる。
マスターは変わらず笑顔を向けてくるから、つい顔を反らしてしまった。
「想いを込めて彼女に渡せば、きっと伝わるはずよ」
「はぁ……」
「坂本さん」
「は、はい」
「坂本さんに足らないものは……」
やっぱりマスターは全て見抜いてる。
俺が自問自答してた答えを優しい笑顔を添えて、教えてくれた。
「素直な気持ちを口に出す、事」
マスターの言葉に決心して、気持ちを固めた。
マスターが作ってくれた花束バスケットを抱えて。
「ありがとうございます。頑張ってきます」
「次はその方と一緒に来てくれるのを楽しみに、お待ちしているわ」
マスターが店先で俺を見送ってくれていた。
俺は真っ直ぐ彼女に向かって、気持ちは走っていた。
*******
「昌くん遅いよぉ」
待ち合わせ場所に着くと、呼び出した張本人はすでに酔っ払っていた。
いつもの事ながら、呆れながら席に着く。
「遅いって待ち合わせ21時だろ? 間に合ってんじゃねーかよ(笑)」
「あれ? そう?」
「彩は何時から飲んでんの?」
「んーっとね、19時!!」
二時間も前から1人で飲んでんのかよ!?
「お前なー……」
「だぁって! これが飲まずにはいられますかー!?」
おーおー。
今回も荒れてますなぁ。
わかっちゃいたけど、彩のこんな姿もう何度となく見てきて、俺の心は痛い。
この痛みが今日、全て消える事を願って、深呼吸する。
どうか、どうか伝わりますように。
「彩」
「なーにー?」
「ちょっと水飲んで」
「えー? 嫌だよ。今日はとことん飲むんだから!」
「後で幾らでも付き合ってやるから。今はお願い、飲んで」
「えー? 何よ昌くん、どうしたの?」