Sweet☆Motion

□第22話
2ページ/3ページ



彩が泣きながら語った。

初めて、彩の泣いている姿を見た。初めて、彩の本音を聞いた。

彩がこんなにも傷ついていた事に今更気づく自分‥‥。





「私‥‥、彩の存在に甘え過ぎてたね。苦しめて‥‥傷つけて、ごめん」





彩は、好きな人に振り向いて貰いたくて行動したんでしょ?

そしたら、尚更苦しくなっちゃったんでしょ?





「わ‥‥私が‥‥」

「ここまで彩を追い詰めたのは、私なんだね。今まで何も知ろうとしない、分かろうとしてこなかったもの。私は確かにズルイ。あの日以来、私は今まで昌の優しさに甘えてた」

「‥‥昌兄?」

「昌の気持ち知ってて、答えないで、何も考えたくなくて‥‥。そんな私に、昌は何も言わず傍にいてくれて、私は寄りかかりっきりで。私は‥‥」

「‥‥昌兄を選んだの?」

「‥‥ううん、違うの。‥‥私はまだ、何も選べないの」





時間がゆっくり流れる。

彩が気持ちを、本音を、話してくれたんだ。今度は私の番。

話を聞いてと言ったのは、私なんだもの。





「彩、准くんと一緒に家に来た時あったでしょ?」

「‥‥うん」

「あの時、剛に“会いたいから会いに来た”って言われた。その時初めて、意識した。考えなきゃいけないんだって‥‥。剛に無理矢理キスされた時、ビックリしたけど心が傾くとかそういうのはなかった。あの時、私の心を占めてたのは、私が考えていたのは‥‥」





人の気持ちを聞くよりも自分の気持ちを話す時の方がドキドキするもんなんだって、今、知った。





「‥‥快彦の事ばかりだった」

「‥‥雅ちゃん」





名前を出した瞬間、声が震えた。





「私の方こそ、卑怯だよ。人の気持ち知ってて、甘えて、自分の気持ちは別の所にあるって自覚して。でもね‥‥」





彩が私を見据える。私は目をそらさず、しっかりとした口調で続けた。





「私は、彩とのあの一件が何よりもショックだった。どうすればいいのか分からなくて、その場の流れに身を任せた‥‥。でも、止める。ちゃんと考えて、ちゃんと自分の気持ち表す事にした。私、決めたの」

「‥‥何を?」

「私‥‥自分の気持ち、快彦に伝える」

「‥‥雅ちゃん‥‥」

「上手く言えないかもしれないけど、伝えてみる。勿論、昌にも。‥‥そして、剛にも。決心出来たからこそ、私は今日ここに来た」

「‥‥雅ちゃん‥‥でも‥‥」

「私を本当に嫌いになっていないなら、帰ってきて。私もう、逃げないから」





自分の気持ちを伝えると、彩が逆に戸惑っていた。





「私達‥‥十分悩んで傷ついてきたじゃん? そろそろ自分を楽に‥‥許してあげてもいいんじゃないかな?」





そう言うと、彩が微かに笑った。





「許して‥‥いいの?」

「十分責め合ったんだから、いいに決まってる!」





笑って言った筈なのに、私の瞳からは涙が零れた。

ホッとしたのか、彩がちゃんと話を聞いてくれたからなのか。


だって‥‥やっぱり、自分の気持ちを言葉に出すのは怖かったもの。



次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ