Sweet☆Motion
□第21話
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毎日、ただボーっとするだけ。ただ、それだけ。
何もする気が起きなくて、苦しくて、現実から逃げ出したくなった。
長い有休取って、親に頼んで別荘に逃げる様に来て、もうすぐ3週間が経とうとしていた。
私‥‥何やってんだろう?
そう思えるようになったのはつい最近の事。でも、体は、心は、まだ動かない。
1人になって考えたかった。ううん、考えたくなかった。自分の気持ちが、初めて分からなくなった。
庭に出て、ボーっと遠くの緑を眺めてみる。
こうしているとこんなにも穏やかなのに、ひとたびあの日の光景を思い出すと胸がざわめき苦しくなる。
幾つかの恋愛を経験して、苦しくなったり傷ついたりもしたはずなのに、考えても仕方がないモノ、現実に起きたモノ、自分があんなに卑怯で、最低で、小さい人間だったなんて‥‥。
私は何から逃げてきたんだろう?
剛くん? 雅ちゃん?
健ちゃんや准くんから?
それとも、自分自身に‥‥かな?
アレコレ考え出す思考を停止させ、またボーっと遠くを眺めていると
「彩!」
聞き覚えのある声が聞こえてきた。呼ばれた方を振り向くと
「雅ちゃん!?」
そこには、紛れも無く雅ちゃんの姿があった。
あの日以来‥‥会う事のなかった雅ちゃんが、家の前に立っている。
「あの‥‥。健ちゃんが彩が居ないって心配してて、連絡も取れなくて、もしかしてここかなって‥‥」
雅ちゃんは慌てて状況説明する。私が何も返事をしないでいると
「ごめん‥‥。会いたく‥‥なかったよね‥‥」
悲しそうに笑って言った。
高校生の時、一度だけ雅ちゃんとここに来た事があった。
この別荘がお気に入りだと、その時言ったっけ。雅ちゃんは覚えてくれてたんだ。
あんなに酷い事言ったのに、傷つけた筈なのに、私を探してくれるんだね。
笑いかけてくれるんだね。
雅ちゃん‥‥私は雅ちゃんのそういう所、本当に好きだったよ。
なのに‥‥
「上がって? 何も無いけど」
そう言って部屋へ促すと、雅ちゃんはホッとした笑顔を見せた。
そんな雅ちゃんを見て
少し雰囲気変わった?
そう思わずにいられないながらも上手く言葉を交わせないでいた。
自分がお茶を煎れてる間、雅ちゃんは部屋の中を見渡していた。
「懐かしいでしょ? あまり変わってないと思うよ」
「うん」
雅ちゃんにお茶を出すと、自分もソファに座わりお茶を飲んでみた。
不思議な空気が流れていた。