Sweet☆Motion

□第9話
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皆とご飯を食べ終わった後、健ちゃんが送ってくれる事になった。平気だよって言ったんだけど、半ば強引に。

本当は、少し1人になりたかったんだけど‥‥。





「だいぶ夜でも、あったかくなってきたね」

「そうだね」





思いの他、穏やかな時間が流れていた。

家の近所を流れる川沿いに沿って、2人肩を並べてゆっくりと歩く。





「夏になったら‥‥」





健ちゃんが、川の流れを見ながら言う。





「うん?」

「夏になったらツアーが始まるから、彩 雅と一緒に見に来てよ」

「あんなに沢山のファンに囲まれちゃったら、健ちゃん達ちゃんと見れないよ(笑)?」

「彩が見に来てくれるなら、俺頑張るから!」





とっても優しく笑って言う健ちゃんを見ると、断る言葉が浮かんでこないよ。





「私が見に行かなくたって、健ちゃんなら頑張れるくせに」

「もっと頑張る!!」





健ちゃん‥‥、どうしてそんなに優しい笑顔を向けてくれるの?

胸が締め付けられるよ。


それでも健ちゃんと一緒に笑ってみせる。





「彩ー」

「うん?」

「あのさ‥‥」





私の名前を呼んだ後、少し言いにくそうにしている健ちゃんを見て、あまりいい予感はしなかったけど





「俺で良ければさ‥‥、話してみない?」

「え‥‥?」





健ちゃんの言い方が本当に優しくて、それだけで涙が溢れそうになった。

足を止め、夜風が髪を揺らす。





「彩が今思ってる事少しでも楽になるなら、俺話聞くよ?」

「‥‥健ちゃん‥‥」

「って言うか、俺が聞きたいだけだったりして?(笑)‥‥正直言うとさ、今日の彩見てられなかったよ」





言われたくない事だって、余計な事だって分かってるけど、俺、もう我慢出来ないや。

彩のそんな笑顔見てられない。





「彩の全部知ってる訳じゃないけど、今日の彩全然らしくなかった。辛いなら言って? 自分で自分を傷つけちゃダメだよ」





君の瞳が、どんどん潤んでくるのが分かると、抱きしめたい衝動に駆られる。

初めて見る彩の姿に、多少戸惑いもあって言葉の続きが出てこない。





「‥‥健ちゃん‥‥。私‥‥おかしいよね?」





必死で笑顔を作る彩は、今日自分がした事を分かっている様子だった。


そんなに‥‥追い詰められてるの?





「私‥‥」





声が震えて、今にも涙が零れそう。

それを必死で隠す君が愛しくなるばかり。

強がって涙を見せないようにしているのは、俺に遠慮してるの?

全然構わないんだよ?

今だけでもいいから俺に甘えてよ。





「私は‥‥愚かだ」





そう言って、我慢出来ずポロポロと涙を流す彩を見て、俺まで泣きそうになるよ。


そうだね。君は愚かだ。

でも、俺だってそうだよ。

分かっていたって、どうにも出来ない気持ちを抱えてる奴は、みんな愚かだよ。

でも、それでいいと思うんだ‥‥。



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