《准 side》
何故、止められなかった?
表情を見れば分かっていた筈なのに、止める事が出来なかった。
「彩ちゃん、剛くんの事好きやろ?」
「‥‥准くん‥‥」
泣きそうな顔する君を見て、やっぱり聞いてはいけなかったと確信する。
でも、俺はいつも見守る事しか出来なくて、ちょっとでもいいから頼って欲しいって思ってしまうんだ。
そんな些細な自分の欲で
今、君は、笑顔を消して俯いている。
ほっとけなくて、でも、何も出来なくて、いつもいつも、君の笑顔を見てきた。
自分がどうしたいのかも分からないけど
ただ、君の笑顔を心底見たいと思うんだ。
「ごめん‥‥准くん。今は‥‥話したくない」
「‥‥俺こそ、余計な事言ってごめん」
君は意外と強いんだね。
でも今は、その強さ切ない気持ちにさせるだけだよ?
「行こう‥‥か?」
「うん」
不器用に笑う君を抱きしめたい
そう思う俺はきっと───‥‥。
でも、そしたら君はきっと
もっと困ってしまうんだろうね。
謝る事しか出来ない俺と
弱音を吐かない君
この距離は縮まらない?