遊蝶華伝

洋と和
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「写真の男は桐白荒鬼(きりしろ あれき)。犯罪グループの1人だ」
「……グループ」
「そうだ。日本は今飢えたガキ達が戦争をおこそうとしている。裏で孤児の奴らが、国を支配しようと動きをみせているんだ」
「…孤児が?何故」
「気になるか?」

ニッと笑う相手を、リヴィンが睨み付ける。ルイト・メア・プルート。左側だけ前髪を後ろにした、体格のいい男だった。彼はくわえていた煙草を手に持ちかえる。

「同じ境遇の連中が何をしようとしてるのか。若気の至りというか尻が青いというか…まぁ、若い奴てのは何やらかすか分からないからな」
「テロか?」
「ああ。自分達が国を変えよう、という思考だろう。昔のお前みたいに、未来を変えるとな」

そう言って、ルイトがリヴィンを奇妙な眼差しで見つめる。
リヴィンは未来ではなく過去の夢をみる時、それがいつも同じ夢なのを、ルイトは知っていた。リヴィンは過去の記憶に囚われたままなのだ。

「とりあえず次の作戦で、連中を捕まえてみせるから」

リヴィンが言う。

「おとり作戦か?上手くいくかねぇ、その夢で見た女をこちらが先に捕らえ、連中が殺しにやってくるのを一気に叩
くんだろう。おすすめはできないな。女を利用するのはいいが見殺しってのは、気がひける」
「そうかよ」

シュン、と扉が開き中へ入っていくリヴィン。扉の外でルイトが頭をかきながら自室へ歩いていった。

「スピー」
「よっ、リヴィ!」

部屋の中にいたのはアヴェル・スピネル。中国人の若い男。ピンクの髪を高い位置で両サイド結んでいる。髪の長さは首の辺りまでだ。やんちゃな黒い目をらんらんと輝かせて彼が叫ぶ。

「リヴィー、任務アルか?」
「そうだよ。今回はスピーにも活躍してもらうから」
「マジ?俺頑張っチャウ!」
「うん、学校で遊んできな」
「ガッコ…?」

アヴェルが頭にクエスチョンを浮かべている様子を、リヴィンが笑いながら言った。

「学校で、夢兎城あてなに近づくんだ」




日本の城を思わせる屋敷の屋根の上。夜風を受けながら佇んでいる少女、猫目あいりす。黒いおかっぱの頭に、制服の上はポンチョを羽織っている姿だ。風を受けるたび、彼女の頭に飾ってある鈴が鳴る。

「…風向きが変わった」
「あん?」
「…アレッキー…」
「だから止めろって言ってんだろう。その変な呼び名。も少し強そうなカッコイイ名前あんだろうがよぉ」

桐白荒鬼。だらしなく着込んだ和服に銀髪の長髪。アメリカ人と日本人のハーフである彼は、あいりす同様、"蝶華ノ舘"のメンバーだった。

「……例えば?」
「アレキサンダー・桐白!!どうだ、クールじゃあないかぁ」
「………」
「………」
「風、私達にとって追い風になってる…任務遂行、するべき…。…アレッキー」
「…あっさり却下かい」

ツッコミなくスルーをされたことに軽くうなだれながら、荒鬼は手を振って言った。

「おうよ。必ず成功させるぜ。俺達、蝶華ノ舘の見せ場さねぇ」

月が大きく、彼らを照らし出していた。



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