等身大の僕ら

□優しさとか何とか
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『…あ、突然だけど春。チューリップの花言葉って知ってる?』


「え〜?あるんですか?僕あんまり詳しくないんですよね…」


心地の良い風
晴れ渡る空

まさに春


あまりにも心地よく、寝てしまう陽気である
しかし、春と琥穏は寝るどころか生命の危機を感じていた


『えーっとね……ワリィ、腹減って思いだせん』


「…琥穏くんもですか……遅いですね、悠太くんたち」


二人の身に迫っているのは、空腹感
辛い辛い四時限目も終わり、待っているのは至福の時。そう昼食

しかし、二人はまだ食べ物を口にしていなかった
例の幼馴染の双子と眼鏡が飲み物を買いに行ったきり、帰ってこない


『遅いよぉ〜。なにしてんの?攫われてんの?』


「え!?む、迎えに行ったほうがいいんでしょうか…」


いや、幼稚園児か
琥穏は突っ込む

むしろ攫われるのは春の方だし。気をつけて
と言ったら、え…と返された
君ならあり得る


だが、遅い。遅すぎる…
琥穏も本気で迎えに行こうかと考え始めた


そろそろ限界。そう言って琥穏は腰を上げた
校内へ続く屋上のドアを開ける

否、開けようとしたが叶わなかった
なぜなら自分よりも早いタイミングでドアを向こう側から開けた人がいたから


ゴンッ


鈍い音が響いた後、額に感じる鈍く、強い痛み


『いっ…!!』


思わず叫ぶ。イタイ、痛い、いたい!
しかし、犯人は悪びれる様子もなく、それどころか謝りもしないで!!
タタッと屋上の隅へ走り去ってしまう

…要たちでは、ない。
謝るとか、そういう問題ではなく、小さい。本当に小さい。


誰なのか確認はしたいところだが額の痛みが強すぎて、できない
こめかみを直撃だ。あ、クラクラする

額を抑え、うずくまっている琥穏をよそに春は、小さな影の正体へ近づく


(あ、女の子…)


春よりも小さく、幼い少女が眼にうっすら涙を浮かべ立っていた
少女の膝小僧には擦りむいた傷がある

春はここで少女をほっとくような性格ではない
制服のポケットに手を入れ、目的のものを探す

あった。絆創膏
それを手にしながら少女へ近づく


「よかったらこれ、使います?」


ギッと、力強く睨まれる
幼い体からは想像もできない鋭い眼光だった

そして隙をついて逃げ出す少女


「あ、まっ…」


反射神経を使って、追いかける春
少女は屋上から逃げ出すわけで
入口の近くには、琥穏がいるわけで


「琥穏くんスイマセン!!すぐ戻ってきます」


『っマジ!!?』



あ、思いっきし叫んで、頭痛くて
なんか手が、濡れていて



(視界もう、ろ)



そっから先は













 

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