作品集

□体育館の裏で
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ツイてない。高校入学直後、一週間もしないうちにあたしは伝染病の類に感染した。学校のみんなにはインフルエンザ気取ってるけど、実は水疱瘡だ。この年で。ダサい。ツイてない。久しぶり学校に来たのはいいけど、出席停止の一週間の間に勝手に委員会を決められていて、あたしは体育委員にされていた。中学時代に運動部だったからって、ちくしょー。


「、ん‥?」


早速仕事を頼まれ、体育館倉庫から授業に必要なものを運び出した帰り、体育館の裏であたしは見てはいけないものを見てしまった。


「‥ゆーくん?」
「‥あ?」
「やっぱり、ゆーくんだ。
 なにしてんの?」


そこにいたのは幼なじみのゆーくんこと、大楠雄二だった。金色の髪を、パーマかけたみたいなリーゼントにして、気付いたときには喧嘩が趣味の不良さんになっていた。


「ゆーくん‥なにそれ‥」
「あ?これ?
 あんま見んなよ、カッコ悪ィ、からさ。」
「そうじゃなくて、」


久しぶりに、お話しようかなあ、なんて、近づいてみたら、ゆーくんは顔やら体やらいたるところから血を流していた。


「血、でてる、」
「派手にやったからなー。」


あははー、って陽気に笑ってるけど、笑えないよ、ゆーくん。咄嗟に持っていたスポーツタオルを、見た目が一番ひどい傷に当てる。けど、あたしはどうも昔から血が苦手で、怖いという意識があるのか見ると指先が震えてしまう。


「‥怖い?」
「‥‥すこし。」
「‥ごめんな。」


えええ、なんでゆーくんが謝るの?あたしが怖いのは血だけで、ゆーくんのことは怖いなんて思ってないよ。

それを伝えたら、ゆーくんは少し困った顔をした。


「ちょっと、いい?」
「なに?」


おもむろに、近寄ってきたと思ったら、そのままあたしはゆーくんの腕の中に収められてしまった。腕、固いなあ。こんなに背、高かったっけ。すごく、男の人、って感じ。


「少しだけ、このままでいさせて?」


そしたらちゃんと授業出るから、ゆーくんは腕の力を強くした。もう、血は怖くない。




体育館の裏で

桜木軍団でいちばん背が大きいゆーくんは、心も大きくてあったかかったです。なんか、どきどき。






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素敵企画赤は止まれ様提出

わがまま言って大楠
書かせてもらいました。
幼なじみに好きって
言わない言えない大楠。
それにしても、大楠
ゆーくんって(笑)←


ありがとうございました!


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