人魚姫

□爆発
1ページ/1ページ

花火も終わり、気付けば時計の針が22時30分を差していた。
レギュラー達は各自、自分の部屋で寛いでいた。




名無しさんは一人自室のベッドでジタバタしている。




名無しさん(うぅ…早く伝えなきゃ…時間がないよ…)




そう、夜中の0時までに結ばれなければ…
名無しさんは海騎の花嫁にならなければならない。




名無しさん(よし…悩んでる時間がもったいない…伝えよう!!)





名無しさんは勢い良くベッドから身を起こす。
するとドアがノックされた。







コンコン






名無しさん(誰かな…??)






名無しさんがドアを開くと、桜乃と朋香がいた。
名無しさんはまさか二人が自分を訪ねて来るとは思っていなかった。






名無しさん『どうしたの??』


桜乃「話があるの…」





名無しさんは時計を見た。
時計は23時を回ろうとしていた。





名無しさん『私も話したいんだけど…今は時間が…』


朋香「いいから、ついて来なさいよ。」





朋香は名無しさんの腕を掴んで歩き出す。
名無しさんは声を出せないので、誰も気付いてくれない。


朋香に腕を掴まれ桜乃に背中を押されているので、力で抵抗も出来なかった。








名無しさんは浜辺へ連れて来られ、勢い良く突き飛ばされた。
キッと二人を睨み付ける。




名無しさん『どうしてこんな事…!?』


朋香「…どうして??あんたがウザいからよ。」


名無しさん『何で…』


朋香「いきなり出て来て、当たり前のようにマネージャーになって…レギュラーの皆さんと馴れ馴れしく…」


名無しさん『私はただ、皆の仲間になりたかった…桜乃ちゃんと朋香ちゃんとも、友達になりたかった…っ』


朋香「うるさい!!」





パンッ





朋香は名無しさんの頬に平手打ちをした。
名無しさんは目を見開き、朋香を見つめる。





朋香「私達はあんたが邪魔なの。リョーマ様に色目使って…あんたなんかと友達になりたくないわよ!!」


















その頃、リョーマはホテルで名無しさんを探していた。
用があったわけではなかったが、ただ顔が見たくなった。
しかし、いくら探しても姿が見えない。


リョーマが名無しさんを探し回っていると、ホテルの従業員がリョーマに声を掛けた。





従業員「あの…名無しさん様を探していらっしゃいますか??」


リョーマ「え…はい。」


従業員「先ほど、マネージャーのお二方と浜辺へ向かっていらっしゃいました。何だか、深刻な顔をしていらしたので…」






従業員の話を最後まで聞き終わる前に、リョーマは浜辺へ走り出した。
何故か、嫌な予感がしたのだ。













浜辺では、朋香と名無しさんの言い争いは続いていた。
言い争いと言っても、名無しさんはノートにしか気持ちを表せないので、朋香が一方的に怒りをぶつけていた。





朋香「あんたが私達の前から消えれば問題ないのよ!!」


名無しさん『そんな事…出来ない。』


朋香「生意気…桜乃、あんたも何か言いなさいよ!!」


桜乃「わ、私は…」


朋香「リョーマ様奪われていいの!?」





朋香の一言で、桜乃はゆっくりと名無しさんに歩み寄る。





桜乃「名無しさんちゃん…お願い、リョーマ君から身を引いてほしいの…」


名無しさん『…出来ない。』





名無しさんの一言で桜乃の中で何かが切れた。
桜乃は急に冷たい目になり、名無しさんは思わずビクッと肩を震わす。




桜乃「リョーマ君が…名無しさんちゃんの事何て言ってるか知ってる??」


名無しさん(え…)




桜乃はニヤリと笑う。
そして名無しさんの手からノートを取り上げる。



桜乃「ノートでしか話せなくて、面倒だ…」





桜乃は自分で用意していたライターでノートに火を付けた。
パチパチと炎が上がり、桜乃は砂浜へノートを落とす。


名無しさんはノートを燃やされたショックで、ただ呆然と炎が上がっているノートを見つめた。





桜乃「話せないし身元がわからなくて可哀想だから…同情で相手してるんだって。」





名無しさんの頬に大粒の涙が伝った。
桜乃と朋香は笑いながら名無しさんを見下ろす。





名無しさんは自分の気持ちを伝える唯一のノートを失い、とてもショックを受けた。
いや…それ以上に桜乃の話がショックで、ただただ呆然とした。
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ