□泥棒Panic☆
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【第一幕(勧誘)】




ロンドンから離れた郊外

閑静な自然に囲まれた一画に

ファントムハイヴ邸はあった。





今日は何かの集まりなのだろうか、屋敷内は朝から異様な賑わいを見せていた。




「本日は、ようこそお集まり下さいました」




執事であるセバスチャンが、お客様を前に一礼していた。





「ンフッ☆セバスちゃんの呼び出しなら、いつ何時でもOKに決まってるじゃな〜い




赤い死神グレルは、いつものようにセバスチャンに擦り寄る。




「ふあぁぁぁ…話があるなら、早くしておくれ〜?小生は昨夜、ず〜っと【お客さん】の相手をしてたから寝不足なんだ…」




葬儀屋アンダーテイカーは、袖で口元を隠しつつ眠そうに大欠伸をしていた。






すると―――。




カツコツカツコツ…





「フフッ…最近ちまたを騒がせている【連続殺人事件】ついに、女王の番犬のおでましかい?」




どこからともなく、煙管を銜えた劉が姿を現した。




「…って、アンタ、どこから降って湧いたのヨ?」



「フフッ…伯爵が動き出すって聞いて、な〜んか面白そうだな〜と思って♪」



「……出たよ。デバガメが…」



「ホ〜ントホント☆」





カツコツカツコツ…



すると、屋敷の主人であるシエル・ファントムハイヴ伯爵が呆れた顔をしながら姿を現した。




「劉、コレは遊びではないんだぞ」



「や〜あ、伯爵〜♪」



劉はにこやかに手を振るが、シエルはあえて無視して椅子に腰を下ろした。





「…で?今回の仕事は、その【連続殺人事件】を調査する事なのかい?」




劉の問い掛けにシエルは首を横に振った。





「…いいや、違う」



「「「―――っ…!!?」」」





そんな否定の言葉に、周囲は驚く。




「セバスチャン。説明してやれ」



「…御意。では、私からご説明させて頂きま―――」



「ちょ〜っと待った!」





シエルの合図で話を始めようとしたセバスチャンだが、話のこしを折るように葬儀屋が声を上げた。





「…どうかされましたか?葬儀屋さん」



「そんな話なら、小生は帰らせてもらうよ。情報が欲しければ後で店に来ればいい…。対価分の情報なら、ちゃ〜んと教えてあげるよぉ…。じゃ、そ〜ゆ〜ことで…♪」




カツコツカツコツ…




袖をヒラヒラ振りながら、葬儀屋は扉に向かって歩き出す。






しかし―――。






「お待ち下さい!」


「ん〜?」





後ろからセバスチャンに呼び止められ、葬儀屋は足を止めた。




「お帰りになるのは、私の話を聞いてからでも遅くはないと思いますが、如何です?」




ニヤリ…




「んん…仕方ないねぇ」




意味深な笑いを浮かべる執事に、葬儀屋は小さな溜め息を零す。





「…で、一体何なのヨ?」


「実は最近英国中の小麦粉が、何者かの手により盗まれると言う事件が多発しておりまして…。警察も手に負えない状況なのです。このままでは、英国中からパンが消えてしまうかも知れません」



「…そうだ。その事を女王も憂いておられる」




そんな女王の番犬の言葉に、死神2人の眉が吊り上がる。




「ヒッヒッ…ビクトリアが憂おうが、なんだろうが、小生には関係ないこと」



「そうヨ。アタシ達死神には関係ないコト☆せっかくだけど、そう言うコトなら帰らせてもらうワ」



「ん…?死神?今、死神って言った!?」




その言葉に劉がすかさず反応する。





「・・・・・・・・・・・・。」




葬儀屋は舌打ちすると、グレルをギロリと睨みつける。





「死神って、鎌持って髑髏被った、本に載ってるアレだよね〜?」



「・・・・・・・・・・・・。」



「ねぇねぇ、伯爵。だ〜よ〜ね〜?」





劉の質問攻めに、シエルは頭を抱えた。







「ねぇ、伯爵〜?」



「…劉、少し黙れ」



「だって、あの赤髪くんが面白い事言うからさ〜♪死神って、人間じゃないよね〜?」





ドキッ!




そんな言葉にシエルが顔を引き攣らせていると、セバスチャンがさりげなく話を元に戻した。





「お2人は【関係ない】と、本当にそう思いますか?」



「ん…?」




そんな言葉に葬儀屋は首を傾げる。




「フフッ…甘いですね」



「どう言うコト?」



「よく、考えてください。小麦粉が無くなると言う事は、パンだけではありません。ケーキもスコーンも作れなくなるのですよ?」





ニヤリと笑い、セバスチャンはグレルに告げた。





すると―――。





「アンダーテイカー、お前の好きなクッキーも作れなくなる…と言う事だぞ?」





シエルはニヤリと笑いながら、葬儀屋に告げた。






「それは…?」


「つまり…?」





2人は、その言葉の意味を考える。





(小生のご飯がなくなる!?)


(セバスちゃんのお手製ケーキが食べられなくなる!?)







ガーーーーーンッ!!!









双方理由は違えど、大ショックを受けたようだ。





「た、大変じゃないか!誰だい、そんな馬鹿な真似する輩は!?小生が見つけて、サクッとあの世に送ってやるよ!!」



「そうヨ☆アタシから、至福の時を奪うなんて…絶対許せないっ!!」





ゴオォォォォ…






やる気の炎が、2人の背中に燃えていた。







クスクスッ…




『坊ちゃん、成功したみたいですね?』


『…ああ、単純なヤツラだな』




セバスチャンとシエルは顔を見合わせると、密かにほくそ笑んでいた。





「おやおや。そこの2人は、急にやる気になったみたいだね?」





俄然、態度を180度変えた2人に劉は苦笑する。





「劉、お前はどうする?」



「ん?勿論、我も参加させてもらうよ。丁度、退屈していた所だし…ね?」



「では、決まりだな」




こうして5人は、謎の【小麦粉泥棒】を追う事になった。





☆つづく…よ☆
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