□*もしもシリーズU*
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【ウィリアム・T・スピアーズ編】







ガチャッ!!






只今、帰りました。






シーーーーーンッ!






・・・・・・・・。




(外出中でしょうか?)




……ん?




(ああ、待ちくたびれて、眠ってしまったのですね)










…すみません。起こしてしまいましたか?




今日こそは定時にあがれると思っていたのですが…また遅くなってしまいました。



あのロナルド・ノックスときたら…




不正な書類を申請してきて、女子社員も女子社員です。いくら仲が良いからと言って、公私混同は―――。





ハッ…!?





い、いいえ。貴女に、こんな話をするつもりでは無かったのですが…。



…どうもいけませんね。



貴女の瞳に見つめられると、つい何でも話してしまう。



フッ…貴女には敵いませんね?



さあ、私の負けです。何をおねだりしたいのですか?



………え?今、何と?



お、お帰りのキス…です…か?



コホンッ!仕方が…ありませんね。






カチャリ…


コトッ…







眼鏡を外すとテーブルの上に置き

長い指をゆっくりと

彼女の滑らかな頬に滑らせる。

そのまま顎を持ち上げ

黒い瞳をジッと見つめた。








「美月…」






眼鏡を外したウィルの瞳

仕事中の鋭い光りはどこへやら

今、その眼差しは何処までも優しく

その欠片すらも見当たらなかった。

黄緑色の瞳は…

ただ新妻を、愛しそうに見つめる。









さぁ、目を瞑って…?










唇が触れるまで、あと数センチ―――。







美月。愛してますよ。






(愛しい貴女の願いなら、どんな事でも致しましょう…。貴女が望むのなら、長期休暇を申請して休む事も私は厭いませんよ)
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