おそ松さん

□この劇場の監督は?
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雑誌ダヴ*ィン*チに掲載されたなごみ探偵その後。
シリアス全開、ちょっとオリジナルキャラいたり…お馬鹿な六つ子はいないよ!暗いよ!
それでもOKな人だけ読んで下さい。


















とある所に立派な屋敷がある。
しかしよく見ると所々ヒビや蔦、硝子が割れてる部屋もある。
誰も住んでないように見えるのに、庭だけは綺麗にされている。
季節ごとに綺麗な花を咲かせるから誰か住んでるのか?思うも住人を見たことがない。
いるのは何十匹の猫のみ。
猫屋敷、幽霊屋敷と言われてる屋敷に誰も住んでるはずがないがない。

数年前に





殺人事件があったのだから。


それ以来ここに人が近寄ろうとしない。
来るとしても幽霊が出るという噂を聞いて面白半分でやってくる輩がたまに。
そして泣き叫んでこの屋敷を後にする。

原因はーーー


「おーいご飯だぞー」

覆面を被った男に呼ばれて何十匹の猫達がご飯に群がる。

広い屋敷にたった一人で住んでるこの男。
もちろん生きている。

綺麗な庭の後にボロボロな屋敷を散策して、髪も服装もボサボサ ボロボロで覆面を被ったこの男に会えば誰もが幽霊と思い逃げてくのは当然と言えば当然。

屋敷もガタがきてるが自分の行動範囲が使えれば問題ないらしい。
それよりもこの庭を綺麗にすることを優先してる。


「あーまた雑草生えてる…めんどくせー」

そう言いながらも手慣れた手付きで雑草を抜いてく。

「『アイツ』も毎日やってたのか」

頭に浮かぶ『アイツ』
バカみたいに優しくてイタい庭師。
初めて会ったのは『死体』だったけど『アイツ』のことは知っている。


「いつになったら終わるんだ?」

プチプチと雑草を抜いた手を止めてわたしを横目で見てきた途端、静かにピリッとした空気に風が横切る。


「おーい!」

「!」

そんな空気に似つかない陽気な声が届きそちらを向けば同じ顔が四人。
人間で同じ顔が揃うのはなかなかないもんだ、特に四人、いや五人か。
覆面男の方を向くといつも外さない覆面を外せば彼らと同じ顔が現れる。

おっと、更に正確に言えば六人だ。


***


庭の真ん中でレジャーシートを敷き美味しそうなご飯と酒を広げてお互いの近況などを語り盛り上がっていた。

「それにしても”この世界”だとなんでボケボケになっちゃうの?ボクの仕事が増えて大変なんだけどチョロ松兄さん」

「そんなの分かんないよ。僕だって普通でいたいのにここではこうなるんだから」

真新しいスーツにはシワはなくスマートに着こなしてる職業 新米刑事のトド松。
に憎まれ口を言われたのは中折れ帽にトレンチコートを着用してる職業 ベテラン刑事のチョロ松。

「一松は変わらないね」

「猫がいればどこでもいい…」

チョロ松が話しかけたのが覆面男もとい一松だ。

「んにしてもこの世界だとなんで常識人になんだ?十四松」

「あははーぼくにも分かんないよ、おそ松兄さん」

インバネスコートという小説の挿絵に描かれる探偵な外見の通り職業 探偵のおそ松。

笑ってお酒を飲んで答えたのは黒の制服に身を包む職業 鑑識官 十四松。

同じ顔で「兄さん」と呼ぶ者がいるならばお分かりだろう、彼らは兄弟だ。
しかし”この世界”では赤の他人。

彼らが出会ったのはごく最近の話。
ここで起きた殺人事件がこの世界で六人が初顔合わせになる。

「『アイツ』はここでもイタイ奴だったみたいだな〜」
「トト子ちゃんやチビ太の発言によれば」と付け足しぐびぐびとビールを流し込むおそ松に彼らの表情が固まる。

「”前の世界”は生きて会えたのにここは遅かったな」

「遅いとか早いとかの問題じゃないよ…どのみち『アイツ』は死ぬんだ」

ぼぞぼそ話してるのに五人の耳に届いた声はハッキリ過ぎて胸を抉れる。

「暗くなんなよ〜!せっかくのビールが不味くなる!」

おそ松は一松の頭を撫でて暗い空気をぶち壊そうとする。
「これ美味いぞ!」この空気に似つかわしい笑顔でそれぞれに食事と酒を渡してく。

「おそ松兄さん、あのさ「飲み過ぎても「ケツ毛燃えるわ!」とか言うなよチョロ松。
トド松はよくこんな甘い酒飲めるな〜
十四松、お前はなんでも食べるからお兄ちゃん嬉しいぞー
逆に一松はもりもり食べないとな!」

チョロ松の言葉を遮ってまで喋ってくるこの男に笑いが出そうになる。
彼はいつだってそうだ、暗く嫌な空気を360度方向転換させる。
それこそ、ここで起きた殺人事件の犯人まで変えしまったのだから。
真犯人は当時働いていた使用人の女。
本人も自分だと名乗ったのに探偵はそれらしく聞こえるように理屈を並べ立て別の犯人に仕立てた。
いくら現場を和ませる、なごみ探偵と言われても仮にも”探偵”を名乗る身としてあるまじき行為。
まぁ犯人にされた男も別の容疑があったことはあったんたが。
そんなおかしなことをするおそ松という男の行動は見てて飽きないから好きだ。


「暗くなる必要なんてないんだよ『アイツ』もそれを望んでない」

「「「「…………」」」」

さっきまで明るくしようとしてた空気を一気にシリアスにさせたおそ松のトーンに無言になる五人の目に映るおそ松の瞳は怒りが見えた。


べキッーーーー缶ビールを潰す音が周りで寝ていた猫の耳に響き驚いて逃げてく猫達がちらほら。

それを横目に潰した缶ビールから少し残っていたビールが彼の手と手を伝いレジャーシートを濡らしてく。

「”ここですること”はもう無い。
だからって焦るな。「ルール」を破れば『アイツ』を救えない。
常に冷静に『アイツ』を救う方法を見落とすな。
俺達は六人で一人だーーーーそうだろ?」

ギロリと今でも殺しかねない瞳でわたしに向けて言われ、わたしはなんのこと?と込めて答えた。





「にゃー」

するとおそ松以外の者の顔も歪み殺意に満ちてく。

一人がわたしの首を掴む。

「止めろ。それをしたって、同じだ」

「チッ」

舌打ちをして乱暴に離した。否 落としたと言った方が正しいか。しかし生憎 猫なので身軽に着地し彼らを見れば未だに殺意の満ちた顔。

ー(お前のせいだ)
ー(お前が悪い)


ー「「「「「『カラ松(兄さん)を返せ』」」」」」ー


散々声に出して言われ続けた言葉は音にならずも聞こえて来る彼らの訴え。

その度にわたしは笑いを抑えるのに必死だ。

『悪役』を演じてるだけのわたしになんとも見当違いな思いを抱いてるのか。

あぁ、いつ言ってやろう、どのタイミングで言えば彼らの絶望とした表情を見れるだろうか?









本当の悪役は













終。

H28.9.11 瞬架。
(続きしないのに無駄に設定だけは考えてるのも載せてみてるよ☆→)
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