おそ松さん

□夏
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〜夏〜


「もうすぐ夏だよ!海に行くしかないっしょ!!」

部屋で各自好きなように過ごしていると突然、長男おそ松の声が兄弟達に届けばそれぞれ違うも(面倒くさい)という顔を向けられ おそ松は眉を下げる。

「ノリ悪いな〜お兄ちゃん寂しいー」

口を尖らせてブーたれる長男に自然と他兄弟の視線は三男に集められ明らかに嫌な顔をするも(行け)の無言の圧力にため息一つ、読んでいた求人誌を置いた。

「あのね、遊んでる場合じゃないんだよ、就活しないと」

「そんなのいつでも出来るけど海に行って遊べるのは夏だけだよ!これ逃したら来年の夏までお預けだよ!」

「いつでもって何?ってかまず就活してないよね?」

「あーはいはい」

正論を言われてもなんとも思っておらず耳をほじほじしながら今度はおそ松の方が面倒くさいという顔をしチョロ松を横目ににやりと笑う。

「チョロ松は行かないのね。お留守ってことで」

「んっ!!……行くよ。みんなが危ない目に遭ったら大変だし」

それらしい理由を言ってるが本当は行きたかったチョロ松。
それを察した他兄弟は内心ため息が漏れる。

「行くって去年行って溺れかけたのどこの誰?」

スマホをいじってるフリをしながら様子見てた末っ子トド松が嫌味を含めて口を開くもチョロ松には届いてないようだ。

「大丈夫!浮き輪あるから!」

ぐっと親指を立てて得意気な笑顔を見せる。

「その浮き輪で死にかけたんでしょ!?忘れたの!?どっからそんな自信出てくんの!?」

「チョロ松兄さん、犬神家で死にかけてたね!」

バランスボールに乗っていた五男 十四松がゴロンとボールから降りると大きく開いた口のまま告げるとトド松はこりと笑う。

「笑って言うことじゃないよ十四松兄さん。その隣で真似してたからチョロ松兄さんが溺れてるって気付くの遅れたんだよ。
あとちょっと遅かったらボクらの最も重要アイデンティティである六つ子じゃなくなってたよ」

「まぁー生きてたからいいじゃん。大体去年の夏とか俺ら死んでたようなもんだし」

「「その発言やめれ」」

長男の発言に三男と六男の息ぴったりツッコミを入れるも言われた本人は気にしてない。

「とりあえず今回は大丈夫だって。見て!この間のライブで販売してたにゃーちゃんがプリントされた限定浮き輪があるから!!」

「なんちゅうもん持ってんだよ!
カラ松兄さん並にイタいよ!ってか行く気満々じゃん!」

「え」

それぞれのやりとりを見ていたら突然自分の名前を出され驚く間もなくおそ松が肩を組んできた。

「カラ松は行くよな?」

「フッ。灼熱のサンシャインを浴びて漆黒の闇に染まるオレというのも悪くないな」

「なに言ってんだがさっぱり分からん」

サングラスを掛けて意味不明な言葉を述べるカラ松に他兄弟はドン引く。

「「灼熱の太陽を浴びて日焼けしたい」って、そのまま焼け焦げて死ねクソ松」

「なんでわかるの!?」

その中で一松だけは分かったようで訳してくれた。

「一松は?」

体操座りしてる一松にチョロ松が聞くと更に身を縮こませボソッと答える。

「行かない。ただ暑いだけじゃん」

「えー!行こうよー!一松兄さん!!スイカ割りしよー!!」

「家の中で振り回さない!!」

いつの間にか持っていた愛用の野球バットを高速で振り回すもんだからチョロ松が怒声を上げるとピタッと振り回すのを止めて再び一松の方を向く。

「あ!エスパーニャンコ連れて行こ!それなら行く!?」

「!」

表情は変わらないが一松の頭に猫耳がピコっと出て反応。

「でも猫って水嫌いなんでしょ?それに暑いし連れて来て大丈夫かな?」

ピンと張った耳はへこむと十四松が頭をなでなで。

「それならこれがあるぞ」

「なにそれ!?エスパーニャンコにそっくりじゃん!どこで買ったの?」

カラ松が出してきたビーチボールにはエスパーニャンコの顔が書かれておりそれはそっくりで可愛いらしかった。

「先日、己を高めようと彷徨ってたらとある場所でこれを錬成してな」

「一松」

「「体験教室で作った」のかこれを…!?」

まじまじとエスニャンボールをキラキラした目で眺める一松。

「カラ松兄さん昔から手先器用だもんね。これ普通に売っててもおかしくないしその手の職に就いたら?」

「師匠にも才能があるから来ないか。言われたが断った」

「えっ!?」

「オレにはもっと必要な場所がある。そしてオレの中にはまだ目覚めてな「これをエスパーニャンコだと思って持って行けばいいね!」

「えぇ…」

話の途中で遮る十四松は気にすることなくエスニャンボールで遊びだす一松と十四松。

「ボクは行かないよ。海なんて焼けちゃう」

「女子か」

行く流れを断ち切るドライモンスタートッティに視線が集まると雑誌を取り出した。

「今年は山にしない?山なら焼けないしそんなに暑くないんだよ」

「……これ上級者向けじゃん!?」

登山特集が載ってる雑誌。
しかしよく読むと上級者向けでかなりハードな内容。

「俺ら初心者だよ!」

「…ここに小さくなんか書いてあるぞ」

更に読んでるとカラ松が端の方に小さく書いてる文字を発見しそれを長男と三男も読む。

ー「人食い熊出没注意!自己責任で☆」ー

「コッワッ!!☆って何!?何和ませようとしてんの!?」

「わー!熊出るんだって!野球するかな!?」

「しないでしょ」

「ってか熊が出る所に行こうとしてんの!?」

「大丈夫だよ、出会う確率なんて低いに決まってるじゃん。
日頃の運動不足も兼ねて一緒に登ろうよ♪」

「そんなあざとい笑顔で言うな」

「絶対 熊出たって僕達を置いて行くだろ」

「そんなことないよ、助けるよ」

「そんな澄んだ目で言われても信用無いわ!!」

行く行かないでギャーギャー騒ぐ成人男性。お前らもっと考えることあるだろ。


「あーもう!お前ら肝心なことを忘れてるだろ!」

おそ松が大声を上げると五人の動きがピタリと止まり五人の目をそれぞれ見つめて彼は告げた。

「海に行けばーーーー女子の水着姿見放題だぞ!!」

「「「「「!!!!!」」」」」

雷にでも打たれたくらいの衝撃を受けた五人の表情は全く一寸の狂いもなく同じ顔をしていた。

「ぶっちゃけ水着って下着と変わらないじゃん。でも下着姿見ると怒られるし警察呼ばれるけど水着ならOKだぞ!
こんな奇跡があるか!?この奇跡をお前ら逃すつもりか!?」

熱く語る長男の姿は選挙に当選しようと必死に見える人間のようだ。

「それに!!ーーートト子ちゃんも来るんだぞ!!」

その言葉を発した一人、それを聞いた五人は、右手を上げて肘を曲げ、手のひらを左下方に向け、人差し指を頭の前部にあてた…後に語り継がれる程に見事な敬礼をしてのであった…。





おわり。
H28.7.12 瞬架。
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