忍たまテキスト7

□前世
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「喜三太?頭なんか抱えてどうした?悩み事か?」
「あ、きり丸…。さっき庭でなめさん達を遊ばせてたら、くの一教室の連中がやってきたんだ」
「はぁー、そしてなめくじ共々酷い目にあったのか。酷い連中だなあ!」
「ううん、違うんだ」
「じゃあ、何があったんだよ?」
「あのね」


僕は特に気にかけなかったんだけど、いきなりユキちゃんが話しかけてきたんだ。
「喜三太、あんたいつもなめくじばっかり構ってるけど、なめくじの気持ちとか本当に分かってるの?」
って言われたから、僕は自信を持って
「そうだよ。僕となめさん達はいつでも繋がってるんだ!」
って言い返したんだ。そしたら、今度はトモミちゃんが
「喜三太、前世はなめくじだったんじゃない?」
って笑ったんだ。



「ひでえなそりゃ!」
「えっ、酷い?」
「…喜三太、お前だけだぜ…誉め言葉として受け取るのは。で、どうした?何か言い返したのか?」
「ええと…」



僕は、てっきり誉められてると思ったから照れたんだ。そしたら、おシゲちゃんに
「言われてみれば、見た目もなめくじに似てましゅ」
ってまた誉められて



「ちょっと待て喜三太」
「はにゃ?」
「それ、絶対バカにされてるんだと思うぞ?」
「そうかなあ?僕にとっては最高の誉め言葉だけど」
「…まあいいか。でも、誉められてるなら何で悩む必要があるんだ?」
「うん。話はまだ続くんだ」



僕はなめさんみたいって言われて、なめさんのようにぐにゃぐにゃ喜んでたんだ。
すると
「こら、あなた達!喜三太さんは今は立派な人間ですよ?謝りなさい」
って今度は山本シナ先生がやってきたんだ。



「山本シナ先生!?」
「うん」
「そ、それでお前、何て言われたんだ!?」
「どうしたのきり丸?いきなり…」
「いいから話続けろって!」



それで、山本シナ先生がくの一の連中を何故か叱って、何故か僕に謝らせたんだ。
「ごめんなさい…」
「あんまり喜三太がなめくじと仲が良かったから…」
って、三人は僕となめさんの仲が羨ましかったんだって正直に言ったんだ。



「それ、羨ましいのとは違うんじゃねえね?」
「じゃあ何だよう?」
「あ、いや、続けて続けて」



それでね、おシゲちゃんが
「でも、どうして喜三太さんはなめくじの気持ちが分かるんでしゅか?やっぱり前世が…」
って言いかけたら、山本先生が
「そうね。もしかするとトモミさんの言う通り、喜三太さんは生まれてくる前はなめくじだったのかもしれないわ」
って



「ち、ち、ち、ちょっと待てよ!」
「はにゃ?」
「人は人にしか生まれ変わる事ができないんじゃないのかよ!?オレ、なめくじが人に生まれ変わるなんて話聞いたことねえよ!」
「僕だって知らないんだから僕に言わないでよ!」
「ああ…悪い。で、それから何て言ったんだ?」
「うん…」



僕の前世が人じゃなくてなめくじだったなんて、皆それは山本先生の冗談だと思ったんだ。
だからユキちゃんは笑いながら
「山本先生、さすがにご冗談を…」
って言ったんだ。でも、山本先生は
「あら、冗談じゃありませんよ。動植物の魂が自我を持ち人に成りたいと望んだ時、初めて人間の体に宿ります。魂は皆一連の成長を経て繋がっています。だから、あなた達の魂も、私の魂も、なめくじの体に宿っていた可能性もあるんですよ」
って教えてくれたんだ。
そしておシゲちゃんが
「それじゃあ、喜三太さんの前世は、本当になめくじなんでしゅか?」
ってもう一度確認したら山本先生は
「かもしれない、です。あくまでも仮説に過ぎません。何故なら、なめくじのような魂が人間に成長するにはまだやらなくてはいけないことがたくさんあるからです。中でも人間特有の『想像する力』は必要不可欠です。その段階に到達する為には植物から昆虫へ、は虫類からほ乳類へと、実に多くの過程を経るのです。ですが、この世の中は信じられない程たくさんの奇跡が毎日起こっています。その奇跡の一つが『進化の過程を超越し、結果、なめくじの魂が人の魂に成った』という事も十分にあり得る話ですね」
って、僕にはよくわからない説明をしてくれたよ。
「へえー!」
「喜三太すごーい!」
「いきなり人間になっちゃうなんて、やるじゃない!」
「いやあ、それほどでもー!」
僕は何のことかよく分からないままだったけど、皆に誉められたからとりあえず喜んだよ。



「それで、山本先生の話を一生懸命理解しようとしていたところなんだけど…わけわかんなくなっちゃってー…あれ?きり丸?…どこいっちゃったんだろ?」





「土井先生ー!!」
「きり丸!廊下を走るな!何度注意したら分かるんだ!」
「先生!人の魂って最初なめくじだったんですか!?」
「はあ?」
「どうなんですか!?はっきりしてください!」
「はっきり…って、確かにそうかもしれんが…」
「かもしれん、って何すか!それじゃあ分かりませんよ!先生だけが頼りなんですからちゃんと教えてください!でないとこのままじゃくの一にまけちまいますよ!それでもいいんすか?!」
「……先生には何が何やらだ」


「打倒くの一ーーー!!!」









「僕には難しい話よりもなめさんたちと一緒ならそれでいいや。ああ、皆可愛いなあ」








…………………………
このお話で一番偉いのは喜三太です。
知識は必要ない。

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