灰男s

□白雲奇想曲
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気温・気候・体調、全てが良好の日曜日の昼下がり


サワサワと木々の揺れる音が開け放した窓から優しく耳に入ってくる





こんな安寧とした一時…このまま重力に身をゆだねて瞼を閉じてしまえばすぐにでも寝てしまいそうだ。



けれども、今はせっかく恋人であるティキが忙しいお仕事の合間を縫って(前にティキからノアとか黒の教団…とかいろいろ訊かされたけどあまりにも話がぶっ飛んでたからまだ信じてない)家に遊びに来てくれたのだから少しでも同じ時間を過ごしたい。



……それでも…







白雲奇想曲








『ティキ…暇…』

「そっか」






数メートル先にあるソファに座る彼から“まぁ頑張れ”と愛情の欠片も感じられない言葉が。



あたしが押し黙るとティキの読んでいる本が捲られる音だけが響く



ちゃんと理解して読めてんのかな、なんて頭の片隅で思いながらテーブルに肘をついて彼の整った横顔を眺める








「…何だよ?」

『別にぃ』

「あそ」






あたしの視線に気付いたのか本から目を逸らさずに声をかけてくれたティキ


だがあたしが素っ気ない返事(実際特に意味はなかったし)を返せばすぐに本に意識を戻したようだ






…やはりする事がないのでボーっとティキの横顔を見ていることにした。









「…おいで」









それから数分が過ぎた頃、呆れたように笑うティキが本を閉じてあたしに手招きをする


素直に隣に腰掛けると、あたしの頭にティキの頭が乗った







『…ティキ、ちょっと重いんですが』

「可愛くねぇな。我慢しろって」

『む』







どうせ可愛くないですよ、とふてくされると、不意に頭の重みが無くなった



何の気なしにティキを見上げると、自分の思っているよりずっと近くにティキの綺麗な顔があった




…っていうかそんな事をボンヤリ考えているせいで唇を奪われてしまったじゃないか。







『…不意打ちは卑怯よ』

「お。赤くなってる」






ククっと小さく笑みをこぼすティキの頬に負けじと口づけてみる








『……驚いてくれなきゃつまんない///』

「驚いてるよ。…でも可愛いなって惚れ直す方が強いみたいだな」








憎らしいのは、アナタへの愛おしさと自分の単純な心。


…悔しいけど大好き。




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