Book壱

□牛誕
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フリー、報告任意。



誰かに誕生日を祝ってもらうなんて考えてもなかった。

リボーンがそれをしてくれるなんて、本当に夢にもみていなかった……



静まり返る部屋。
ひとりで俺は恋人の帰りを待っていた。


いつもの通り苦いコーヒーを用意して。

リボーンが帰るのはたぶんもう少しだから、起きて待っていようとしたけれど、もう夜は更けている。


ふぁ、とあくびをしてから、俺はテーブルに突っ伏した。



ちらり、とカレンダーを見てみると、5月28日のその日に赤いペンで乱暴に丸がついている。


「今日何かあったかな………?」


リボーンが忘れないようにしていた今日この日…


「俺の誕生日……」


どきりとした。
リボーンが忘れないように、わざわざ印を付けてまで……


「違うな」


まさかあの男がそんなことをするとは思えない。


「……さみしいな……」


何ともなしに、俺はつぶやいた。
べつにリボーンに会ってない訳ではない。


体が渇いている訳ではない、のに…………。



「はやく帰ってきてよ…………」


マグカップのフチを指でなぞり、俺は唇をつけた。



「ランボ?」



不意に呼ばれた自分の名前に驚き、俺は肩を揺らす。


「リボーン……?」


そう言って振り向いてみれば、そこに立っていたのは待ち焦がれていたリボーンではなくディーノさんだった。




ディーノさんには悪いが、少し残念で悲しかった。


「んな顔すんなよランボ」


苦笑いしながらディーノさんは俺の頭をくしゃくしゃと撫で、そう言った。



「……ごめんなさい…」


「謝んなよ…、誕生日だろ?ランボ」


ディーノさんはよくこの家へやってくる。
リボーンと何か話しては(殆ど雑談だが)、俺に飴を握らせ帰って行く。


もしかしたらカレンダーの赤い印も、ディーノさんが付けたのかもしれない……。



「…ディーノさん…」


「ぅおっ!!?なんで泣くんだ!?」


涙がボロボロと溢れ出す。
それはもう自分ではどうしようもなく……



「ランボ」


伸びてくるディーノさんの腕。

その行動が意味することはわかっていたけれど、俺は避けられなかった。


いや、避けなかった…。



「リボーンが帰ってくるまでこうさせろよ」


優しく抱きしめるのは、リボーンとは違うところだった。


服越しに触れるディーノさんの指が暖かくて、心地良い。



「っ…駄目だよ…」


リボーンにバレたら殺される。
殺されはしないだろうが、それと同等の制裁が加えられるのは火を見るより明らかだった。



「……はじめてじゃないだろ」


「…っ……」


前にも一度だけこんなことがあった。
リボーンが出張で居なくなったとき、ディーノさんがふらりとやって来て俺を抱き締めた。



『俺の方が幸せにしてやれる』


そう言ってディーノさんは笑ったけれど、俺はその手をとらなかった。



どんなにリボーンが俺に辛くしても。
どんなにリボーンが笑ってくれなくったって…




「…俺は……リボーンが好き」



ディーノさんの胸に顔をうずめながら、俺はつぶやく。


その言葉にディーノさんが傷付くとは知っていたけれど、俺は何を失ってもリボーンが好きだった……



「ごめんなランボ」



俺を引き離したディーノさんは、やっぱり笑っていた。


「…誕生日、おめでとう」


「……うん……」



悲しげな笑みに俺はまた泣きそうになりながらお礼を言って、すこしだけ笑った。



「ランボ」


ぐい、と引き寄せられる腕。
いきなりだし強い力に俺は驚き逃げられる筈も無く、ディーノさんにされるがままになっていた。


唇に触れる小さなぬくもり。
それは俺の罪だった。



「…許せよ…」


切なげに笑ってディーノさんは俺に背を向けた。


「またな、ランボ」


リボーンによろしく言っておいてくれ、と残してディーノさんは部屋を出た。



「…またね……」





「アホ牛」


「リボーン」


入れ違いにリボーンが部屋に入ってきた。



「お帰り。ディーノさんにそこで会ったでしょう?いま来てたん…だ…」


言い終わるよりもはやく、リボーンは俺にキスをした。
乱暴で荒々しいキス……


「てめぇが生まれて20年、か」


唇を離すと、リボーンはそう言って笑った。


笑ったと云っても、唇の端が少しだけ上がったかな?といった感じだった。



「うん、…覚えてたの?」


「……ばーか……」


リボーンは目で笑って、また俺にキスをした。
何度も何度も、深いキスを交わした……。


「目閉じろ、アホ牛」


「………?」



言われたように目を閉じると、リボーンは俺の後ろにまわった。


ひやりとした感覚が首もとに走る。
何かと思い目を開けてみると……



「生まれてきてくれて、……ありがとう」


「リボーン…っ…」



小さなエメラルドが輝くネックレス。
小ぶりなトップだが、エメラルドはきらきらと何よりも輝いていた。



それよりもなによりも、



…俺はリボーンが言った言葉がいちばんうれしかった。



「ありがとう、リボーン……」


「…黙れ……」


溢れ出す涙を止めようとはせず、俺は笑ってそう言った。

照れ隠し(?)のようにリボーンは俺の耳を引っ張った。


「愛してる、リボーン」
「そんなの知ってんだよ」



ありがとう、リボーン






リボーン様は首輪と云う意味でネックレスを渡したみたいです^^笑

ディーノさんとの関係(?)ももちろん知っていて、知りながらも何も言ってないという……

ランボが自分以外の人間を愛するとは思ってないからですハイ。


おめでとうランボ!
 

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