Book壱

□ひばたん
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どうせあの人は来ない。


それに、僕の誕生日なんて知らない筈…。



だって、教えた事無かったし、………


訊かれた事もなかった。



ふてくされたように僕はベッドに寝転がり、静まり返る部屋の天井を見詰めていた。




(お腹…減ったな)




「お昼ご飯作りなよ。跳ねう……」



ま。


…そうだった。
居ないんだ。



途方もない、…孤独感。



「なにたべる?ハンバーグか?」



幻聴まで聴こえてきたか……。
どうせ幻聴なら、と僕は少しだけふざけてみた。



「…貴方を…食べる」



「なっ!恭弥、何かあったか…?」



慌てるようなディーノの声。
からかってやろうと、(幻聴の)声がする方に振り向いた。



「ははっ、熱でもあんのか??」



「…なんで……」



「お誕生日おめでとう、恭弥」



そこには、綺麗にラッピングされた大きな箱を抱える、



…笑うディーノが居た。



「どうして…?」



僕はベッドから起き上がり、跳ね馬の許へと歩み寄る。



…涙が出そうだった。



「びっくりさせてやろうと思って黙ってたんだよ」



泣きそうになっていることに気が付いたのか、ディーノは僕の頭をぐしゃぐしゃと撫でて笑った。



「お誕生日、おめでとう」



「ぅうっ〜〜」



ディーノは泣きながら笑う僕の額にキスをし、そして僕を抱き締めた。



ありがとう、ディーノ。


end




 

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