Book壱

□Simple
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白が紅に染まる。


その紅が黒く…黒く…


「白蘭サ……」

正一は部屋のドアを静かに閉めた。

「…何の…冗談ですか?」

「見て正チャン、紅いよ……?」

真っ赤な血がこびりつく手を、白蘭は差し出した。

正一は駆け寄り、白蘭の手をとる。

べとりと血が正一の白い肌を濡らす。

愛しい人の血――――。

「…正チャンのせい!」

白蘭はニッコリと笑った。正一は青ざめた顔で、

「酷い…」

と呟いた。

「…正チャン、僕のモノになってくれる?」

白蘭は右手に握り締めていたナイフを投げ捨てた。

かん、とナイフが落ちる音と共に、正一は白蘭を強く抱きしめた。

「…何で…っ…何で…」

「…だって正チャン、二人で居る時も違うこと考えてる」

白蘭は血が溢れ出る左手首を押さえた。
指の隙間から、血が滴り落ちる。

「…違う…!違う…」

泣きながら正一は縋り付いた。

「白蘭さん、・・・・好きです」

「本当?」

「そんな顔しないで下さい・・。」

正一は白蘭の冷たいほおに手を当てた。

憂いと悲しみを含む瞳が、わずかに揺れる。

「正チャン・・・・。ごめんね」

「・・・僕は。白蘭さんにいつ嫌われるかと。・・・怖くてっ・・・」

正一は白蘭のシャツに顔をうずめる。

「二人で居る時もいつ言われるかって」

正一がどもる。
白蘭はそんな正一が痛々しくて、ぎゅう、と抱き締めた。

「もう良いよ正チャン。・・・本当に、・・・ごめんね」

「白蘭さん・・・っ」

顔をあげた正一の唇に、白蘭のそれが重なる。

「っふ・・・・」

「正チャン・・・」

ぬるりと舌がからみ合う。
正一がぶるりと体を震わせ、がくりとひざを落とす。
正一の舌を逃がさない様、白蘭も腰を屈める。

「んっ・・・は、あ・・・」

「正チャン、正チャン・・・っ」

正一のシャツに白蘭の手が滑り込む。

「…っあ…ッ!白蘭サン、ここで…?」

照れ隠しの様に正一は言った。白蘭はにこりと笑い、にべもなく言ってのけた。
「もう止められないよ」

「…なっ……!…って、あ!」
正一の胸の小さな尖りを白蘭はくりくりとこね回す。
「…んぁっ…」

びくりと正一は身体をしならさせる。
喘ぎ声を漏らす唇を、白蘭は己の口で塞ぐ。

「あ、あっ……」

「正チャン……」

湿った声で囁き、白蘭は正一の下着の中へ滑り込ませる。

「…っあ…!ダメだって…白蘭サ………」

「ん〜正チャン〜」

グイ、と正一は白蘭の顎を押っ付ける。

刹那。ドアを開ける音で、二人は動きを止めた。

「…何、やってんですか」

血だらけで絡み合う上司二人。

「あ、レオ君」

End
 

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