Book壱

□抱きしめて好きと云って
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はらり、ひらり。

僕達の恋は、

舞い散る何かに似ていた



「ねえ兄さん」

「…ん?」

ランボは、ソファに寝転びそっとディーノに寄り添った。

大きなソファは、ディーノが寝転び腕を伸ばしても、まだ余る程のサイズだった。

「雪が降ってるよ」

ディーノはランボを抱き寄せ、ランボ越しに窓の外をみた。

漆黒の闇に、小さな白い華がいくつも咲く。

いくつもいくつも、とどまる事を知らぬ様に。

「…本当だ。綺麗だなあ」

ディーノはランボの少し癖のある髪の毛に指を通した。
同じシャンプーの、淡く甘い香が鼻腔をくすぐる。

「なあランボ」

「…何?どうしたの?兄さん」

ランボはエメラルドの瞳を細め、柔らかく笑った。
つられるようにして、ディーノも優しく微笑んだ。

「お前が、俺の事兄さんって呼び始めたの、いつからだっけ?」

ランボは、丸い目をくりくりさせ、笑った。

「…忘れちまう位前って事か」

「…僕は覚えてますよ」

「…マジか」

驚いた顔のディーノにキスを求める様にランボは目をつむった。
ランボの細くて長い睫毛が伏せられたのを見て、ディーノは愛おしそうに唇を重ねた。

「四年前の春です」

甘いキスの余韻が消えない唇でランボは紡いだ。

「春…?四年前っつったら、日本にいたよな」

「桜が咲いていた」

「ああ」

思い出した、とディーノは手を打った。

「酒に酔ってふざけてたんだよな」

「…兄さん」

「どうしたランボー?今日はやけに甘えるな」

ランボはディーノの首に手をまわした。
そのままくいと引き寄せ、確かめる様にゆっくりと深い口づけを交わす。

「ランボ…」

僅かに開いた唇を割り、ディーノの舌がランボの口腔へと侵入する。

「…ん」

ディーノはくるりと体の向きを変え、ランボの上に四つん這いになった。

「にい、さん…」

はあ、と熱っぽい吐息を零し、潤んだ瞳でディーノを見詰めた。

「…ランボ」

ディーノはランボの目尻にキスを落とす。

「心配しなくて良い」

俺はここに居るぞ?と言って、ディーノは笑顔を付け加えた。

「有難う」

ランボは白い歯を見せた。
「抱きしめて。好きと云って…?」

「…好きだけじゃあ足りねえよな?」

ディーノはランボのシャツの中に手を滑らせる。

「…こんなところでしたら風邪引いちゃうよ」

「わかってるよ。…そん時は看病よろしく、だな」

「そんな」

ランボは苦笑した。



きっと。


いつまでも、


二人でいられるように……
End
 

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